迷ったら話すときは御社、書くときは貴社

音声の場面は御社、文字の場面は貴社と使い分ける一覧を示した図

使い分けの基本はとてもシンプルです。声に出すときは「御社(おんしゃ)」、文字で書くときは「貴社(きしゃ)」と覚えてください。どちらも相手の会社を敬って呼ぶ言葉で、意味そのものに違いはありません。違うのは使う場面だけです。

この慣用の理由は、日本語の同音異義語にあります。就活では、話す場面で「御社」を使うという基本から覚えましょう。大学が配布する就職ガイドでも、御社は話し言葉、貴社は書き言葉という整理が示されています(鹿児島大学「就職ガイドブック2018」Chapter16、2026年9月14日閲覧)。

場面別の一覧で確認する

就活で迷いやすい場面を一覧にしました。判断の軸は「オンラインかどうか」ではなく、音声で伝えるか、文字で伝えるかです。

以下は、話す・書くの基本を各場面に当てはめた本記事の整理です。

場面

伝え方

使う語

対面の面接・グループディスカッション

音声

御社

オンライン面接(マイクで話す部分)

音声

御社

録画提出型の動画選考

音声

御社

企業への電話・折り返し

音声

御社

説明会での質問

音声

御社

エントリーシート・履歴書

文字

貴社

メール・応募フォームの自由記述

文字

貴社

オンライン面接のチャット欄

文字

貴社

お礼状・手紙

文字

貴社

オンライン面接は画面越しでも音声のやり取りです。ですから話す部分は御社で問題ありません。一方で同じ面接中でも、チャット欄に質問を打ち込むときは文字になるため貴社が自然です。同じツールの中でも、音声と文字で切り替わると考えると迷いません。

書き言葉の御社は「絶対の誤り」ではない

知っておくと気が楽になる点があります。文書の中で御社と書いたからといって、それだけで一律に誤りと断じられるわけではありません。前掲の鹿児島大学の資料でも、文書内の御社を誤りと決めつけるのではなく、表記をそろえることが案内されています(鹿児島大学「就職ガイドブック2018」Chapter16、2026年9月14日閲覧)。

とはいえ、就活の場では貴社で書くのが一般的です。基本は貴社に統一し、同じ書類の中で御社と貴社が混ざらないようにしてください。読み手が気にするのは、正誤よりも「最後まで丁寧に見直しているか」という点です。一貫していない文章のほうが、かえって目立ちます。

読み方と漢字を間違えない

意外と多いのが読み方と変換のミスです。御社は「おんしゃ」、貴社は「きしゃ」と読みます。「ごしゃ」ではありません。面接前に一度声に出しておくと、本番で詰まりにくくなります。

また、変換候補に出る「記者」「帰社」をそのまま確定してしまう誤りもあります。ESを書き終えたら、文書内検索で「きしゃ」に関連する誤変換がないか確認してください。提出前の30秒で防げるミスです。

よくある質問

Qメールは御社と貴社のどちら?
A

メールは文字で伝えるため「貴社」を使います。オンライン面接中のチャット欄も同じく貴社です。判断の軸はオンラインかどうかではなく、音声で話すか文字で書くかです。件名には貴社を入れず、用件と自分の氏名・大学名を書くほうが相手に伝わります。

Q面接で貴社と言ったら不採用?
A

一度の言い間違いだけで結果が決まると考える根拠はありません。気づいたら「失礼しました、御社は」と短く言い直し、そのまま内容を続けてください。長く謝ると、そのやり取り自体が印象に残ってしまいます。訂正は短く、話の中身に戻すのが最善です。

Qオンライン面接ではどちら?
A

マイクで話す部分は音声なので「御社」です。画面越しでも対面の面接と同じ扱いになります。ただし同じ面接中でも、チャット欄に質問や自己紹介を打ち込むときは文字になるため「貴社」が自然です。ツールではなく伝達手段で切り替えると迷いません。

Q御社様と書いてよい?
A

使いません。御社・貴社には「御」「貴」という敬意を表す語がすでに含まれており、そこへ「様」を足すと二重敬語になります。「貴社御中」も同様に重複です。宛名は「株式会社◯◯ 人事部 ◯◯様」または担当者不明時に「人事部御中」とします。

面接と電話で使う御社の例文

話す場面では、すべて御社に置き換えれば問題ありません。ここでは面接・説明会・電話の3場面で、そのまま応用できる例文を用意しました。企業名や事業内容は架空の設定です。実際に使うときは、応募先の情報に置き換えてください。

面接で志望理由を話すとき

以下は架空の広告会社「A社」を志望する場合の例です。

「御社を志望した理由は、データ分析と制作を同じチームで進める体制に魅力を感じたからです。大学ではアンケート調査を担当し、数字から課題を立てる経験をしました。御社の運用型広告の部門で、その進め方を実務として学びたいと考えています。」

短い発言の中に御社が3回以上入ると、聞いていてくどく感じられます。2回目以降は「その体制」「そのチーム」のように指示語へ言い換えるとすっきりします。上の例では、2文目を大学の話にして距離を取っています。

説明会で質問するとき

説明会の質問は、周囲の学生も聞いています。誰が聞いても用件が分かる形にすると印象が良くなります。

「本日はありがとうございました。B大学のCと申します。御社の新規事業部門についてうかがいます。立ち上げ期のチームには、入社何年目くらいの方が配属されることが多いでしょうか。」

ポイントは、名乗り→質問対象→具体的な質問、の順に区切ることです。「御社の◯◯について」と対象を先に置くと、話し手も聞き手も迷いません。事業名が正式に分かっているなら、御社を繰り返すより「新規事業部門の◯◯について」と固有名詞で呼ぶほうが伝わります。

電話をかけるとき・折り返すとき

電話は音声ですから御社を使います。ただし電話では、御社の使用回数より用件の明確さのほうが重要です。

「お世話になっております。D大学のEと申します。二次面接の日程についてご連絡をいただいた件で、お電話いたしました。人事部のF様はいらっしゃいますでしょうか。」

この例には御社が出てきません。それで構いません。相手の会社に電話している時点で、誰の会社の話かは明らかだからです。無理に「御社の二次面接の件で」と入れると、かえって回りくどくなります。御社は必要なときだけ使うと考えてください。

折り返しの電話では、最初に「◯月◯日にご連絡をいただきました」と伝えると、相手が履歴をすぐ探せます。留守電が入っていた場合は、担当者名と用件をメモしてから折り返すと落ち着いて話せます。

ESとメールで使う貴社の例文

メール宛名に会社の正式名称を書く良い例と、貴社御中とする悪い例の比較図

文字で書く場面では、基本として貴社を使います。ここでは、話すときと書くときで同じ内容がどう変わるかを対にして示します。違いは語だけでなく、文の長さや語尾にも出ます。

話す例と書く例を対で見る

面接で話す場合はこうなります。

「御社の海外向け事業に関心があります。学園祭の広報で、英語の投稿を担当した経験を生かしたいです。」

同じ内容をESに書く場合はこうなります。

「貴社の海外向け事業に関心を持ちました。学園祭の広報担当として英語での情報発信を行い、来場者アンケートで海外からの来場が前年より増えたことを確認しました。この経験を貴社での業務に生かしたいと考えています。」

書き言葉では、根拠となる事実を1つ足せます。話すときは短く、書くときは具体的に。この差を意識すると、同じエピソードでも両方の場面で使い回せます。

宛名の会社名と本文中の貴社は役割が違う

メールでは、宛名に正式な会社名を書き、本文中で貴社を使います。宛名は「誰に送ったか」を示す部分で、貴社は「文中で相手を敬って指す」部分です。役割が違うので、両方あって重複ではありません。

宛名の例は次の通りです。

  • 1行目:株式会社◯◯◯◯(正式名称・前株後株も正確に)
  • 2行目:人事部 採用担当 ◯◯様

本文では「このたびは貴社の説明会にお招きいただき、ありがとうございます。」のように書きます。宛名を「貴社 人事部御中」のようにしないでください。宛名には会社の正式名称を書くのが基本です。

会社名の一括置換に注意する

ESを複数社に提出するとき、会社名を検索・置換でまとめて直す人がいます。この方法は事故が起きやすい点に注意してください。志望理由の中に「貴社が提供する◯◯サービス」のように、その会社固有のサービス名や事業名が入っている場合、社名だけ変えると内容が前の会社のままになります。

対策は2つです。1つは、置換後に必ず全文を通して読むこと。もう1つは、固有名詞が入る箇所に自分だけの目印(【 】など)を付けておき、提出前に目印が残っていないか確認することです。他社名が残ったまま提出するミスは、御社と貴社の取り違えよりも影響が大きくなります。

メールの件名は用件が分かるように

件名に貴社を入れる必要はありません。件名は相手が一覧で判断する場所なので、用件と自分の名前を入れます。

  • 「二次面接の日程についてのご相談(G大学・H)」
  • 「説明会参加のお礼(G大学・H)」
  • 「【日程変更のお願い】一次面接について(G大学・H)」

返信するときは、件名の「Re:」を消さずに残すほうが、相手がやり取りを追いやすくなります。件名を毎回書き換えると、同じ話題のメールがばらばらになってしまいます。

弊社・当社・御中とは使う対象が違う

混同しやすい言葉を整理します。御社・貴社は相手の会社を指す言葉、弊社・当社は自分の会社を指す言葉です。就活生は応募先の社員ではないので、応募先を弊社とは呼びません。

弊社・当社は話し手自身の会社

弊社はへりくだった言い方、当社は中立的な言い方で、どちらも話し手が所属する会社を指します。面接で社員の方が「当社では入社後に◯◯研修があります」と話すのは、その方がその会社の人だからです。

学生が「弊社の説明会で」と書くと、意味が逆になってしまいます。アルバイト先や、自分が代表を務める団体について話す場面を除き、就活中に使うことはほとんどないと考えてよいでしょう。

語

指す対象

就活生が使う場面

御社

相手の会社

話すとき

貴社

相手の会社

書くとき

弊社・当社

自分の会社

基本的に使わない

御中

組織宛の宛名の敬称

宛名のみ

御中は宛名専用で、貴社の代わりにはならない

御中は、会社や部署など組織宛に送るときに宛名へ付ける敬称です。文中で相手の会社を指す貴社とは役割が異なります。「御中の事業に関心があります」という書き方は成り立ちません。

宛名では、担当者名が分かっているなら「株式会社◯◯ 人事部 ◯◯様」とし、御中は使いません。担当者が分からないときに「株式会社◯◯ 人事部御中」とします。御中と様を同時に付けないのが原則です。

御社様・貴社様と重ねない

御社・貴社には、すでに敬意を表す「御」「貴」が含まれています。そこへ「様」を足すと敬語が二重になります。「御社様」「貴社様」とは書かないでください。同様に「貴社御中」も重複です。

丁寧にしようとして語を重ねるほど、かえって不自然になります。敬語は足し算ではありません。1つの敬意表現で十分です。

会社以外の応募先や言い間違いへの対応

応募先が会社以外の組織である場合もあります。また、面接で言い間違えることもあります。どちらも、状況を確かめて落ち着いて対応しましょう。

名称に迷ったら正式名称を使う

学校法人、医療法人、官公庁、NPOなど、応募先は会社だけではありません。組織ごとに慣用的な呼び方が紹介されることもありますが、出典のはっきりしない一覧をそのまま覚えるのはおすすめしません。

確実なのは、正式名称で呼ぶ方法です。「◯◯法人◯◯の理念に共感しました」と書けば、敬称選びで迷う必要はありません。どうしても呼び方を知りたいときは、その組織の採用案内や募集要項の表記をまねるのが安全です。採用案内の「当法人」などは組織が自分を指す言葉なので、そのまま相手への呼び方に置き換えないでください。

それでも判断が付かない場合は、大学のキャリアセンターや就職課に相談してください。対応できる内容は大学によって異なります。応募先の名称と、使いたい文章を添えて相談しましょう。

面接で言い間違えたときの対応

面接で「貴社は」と言ってしまっても、慌てる必要はありません。一度の言い間違いだけで選考結果が決まると考えるのは現実的ではなく、そう断定できる根拠もありません。面接官が見ているのは、話の中身と受け答えの姿勢です。

対応はシンプルです。「失礼しました、御社は」と短く言い直し、そのまま話を続けてください。長く謝ると、そのやり取り自体が印象に残ってしまいます。訂正は短く添え、話の内容に戻りましょう。言い間違いに気づかず話し終えた場合は、そのまま次の質問に集中してください。

送信済みのメールやESはどうするか

送ったメールに御社と書いていた、あるいは御社と貴社が混在していた。こうした表記の差だけを理由に、一律に再送する必要があるとはいえません。同じ内容のメールを再送すると、相手の受信箱を余計に占有してしまいます。

一方で、日時や会場を間違えた、添付ファイルを付け忘れた、他社名が残っていたといった内容の誤りは別です。この場合は気づいた時点で、件名に【訂正】と入れて早めに連絡してください。判断の基準は「相手の行動に影響するかどうか」です。表記の違いと、日時や宛先など用件そのものの誤りを分けて考えましょう。

応募先に合わせて原稿を読み直す

ESやメールの提出前に確認する5つの項目を順番に並べたチェックリスト図

最後に、提出前・面接前に使えるチェック手順をまとめます。順番どおりに確認すると、見落としが減ります。

5つの順番で確認する

  1. 相手企業の正式名称:前株・後株、法人格の表記、部署名が合っているか
  2. 音声か文字か:話す原稿なら御社、書類やメールなら貴社に統一されているか
  3. 主語:弊社・当社が紛れ込んでいないか、主語が自分か相手か明確か
  4. 敬称の重複:御社様、貴社御中、御中と様の併用がないか
  5. 用件:メールの件名と冒頭で、何の連絡かが分かるか

この順に見ると、社名という最も影響の大きい項目から確認できます。時間がないときは1と5だけでも実施してください。

ESは声に出して読む

ESを提出する前に、一度音読することをおすすめします。目的は2つあります。1つは、貴社を御社と読み替えて面接用の言い回しに慣れること。もう1つは、文の長さを整えることです。

音読して息が続かない文は、読み手にとっても長すぎます。1文60文字程度を目安に区切ると、格段に読みやすくなります。接続助詞の「〜が、」で文をつなげすぎていないかも、声に出すと気づきやすくなります。

まとめ

御社と貴社は、意味は同じで使う場面が違うだけです。話すときは御社、書くときは貴社。この基本を押さえると、場面に合わせて選びやすくなります。オンライン面接では、音声の部分は御社、チャット欄は貴社と切り替えます。

弊社・当社は自分の会社を指す言葉なので、就活生が応募先に使うことはありません。御中は宛名専用で、文中の貴社の代わりにはなりません。御社様・貴社様のように敬称を重ねないことも覚えておいてください。

言い間違えたら短く言い直し、内容に戻る。送信済みメールは、表記差だけでなく用件の誤りがないかを確かめる。会社以外の応募先は正式名称で呼び、迷ったら募集要項の表記か大学のキャリアセンターで確認する。まずは、いま書きかけのESを開いて、社名と貴社の表記が統一されているか確認するところから始めてみてください。