業界一覧を1枚で|商流×顧客の2軸で見た就活の業界地図

就活で見る業界の一覧は、業界名を覚えるよりも「商流のどこにいるか」と「顧客が企業か消費者か」で置き直すと理解が早くなります。就活サイトでは慣用的に、メーカー・商社・小売・金融・サービス・IT通信・広告メディア・官公庁団体という8つ前後にまとめることが多いです。この記事では、その分け方を踏まえつつ、モノとお金の流れに沿って並べ替えた地図を示します。
「業界は何種類ありますか?」という疑問には、分け方によって変わる、と答えるのが正確です。統計上は総務省の日本標準産業分類でA〜Tの20大分類が定められており(e-Stat「日本標準産業分類(令和5年7月改定)」、2026年9月26日閲覧)、就活では8つ前後に束ねるのが一般的です。
まずは全体像の表です。縦は商流上の役割、横は主な顧客(BtoB・BtoC・両方)です。
商流上の役割 | 主にBtoB(顧客は企業) | 両方 | 主にBtoC(顧客は消費者) |
|---|---|---|---|
つくる | 素材メーカー・部品メーカー | 完成品メーカー(自動車・家電・食品・日用品など) | — |
つなぐ | 総合商社・専門商社・卸売・物流 | 運輸(貨物と旅客の両方を持つ企業) | 旅客輸送 |
売る | 業務用卸 | EC(法人向け・個人向けの両方) | スーパー・コンビニ・百貨店・専門店・EC |
支える | 広告代理店・コンサル・SIer・建設 | 金融(銀行・証券・保険)・不動産・IT・通信・人材・インフラ | 個人向け保険・住宅販売 |
直接届ける | 企業研修・社員食堂などの受託 | 教育 | 飲食・宿泊・旅行・レジャー・美容・医療・福祉 |
公共 | 官公庁・自治体・独立行政法人・業界団体・NPO(営利企業ではない公共セクター) | ||
この表の狙いは、業界名の暗記ではありません。ある企業を知ったときに「この会社は商流のどこにいて、顧客は企業か消費者か」を置けるようになることです。置き方が分かると、初めて聞く社名でも仕事の中身をおおよそ想像できます。就活の業界一覧を表で持っておく価値は、そこにあります。
よくある質問
Q業界は何種類ありますか?
分け方によって変わります。統計基準である総務省の日本標準産業分類ではA〜Tの20大分類が定められており、その下に中分類・小分類・細分類が続きます。一方、就活サイトではメーカー・商社・小売・金融・サービス・IT通信・広告メディア・官公庁団体など8つ前後にまとめるのが一般的です。
Q業界・業種・職種の違いは?
業種は企業が行っている事業の種類で、産業分類に近い言葉です。業界は同じ商品やサービスの市場で競う企業の集まりを指し、話し手によって範囲が変わります。職種は個人が担当する仕事の種類で、営業や企画、経理のようにどの業界にも共通して存在します。
QBtoBとBtoCはどちらを選ぶべきですか?
優劣ではなく、顧客と売り方の違いです。BtoBは取引額が大きく複数部門の検討を経て決まり、BtoCは個人が比較して決めます。知っている会社はBtoCに偏りやすいため、まずBtoBの業界も表に置いてから、仕事の中身で比べることをおすすめします。
Qメーカーと商社の違いは?
自社で製品をつくるかどうかが最大の違いです。メーカーは企画・開発・製造を自社で行い、製品の販売差益で収益を得ます。商社はつくらずに仕入れや取引の仲介を行い、口銭や取引差益、事業投資からの収益で成り立ちます。総合商社と専門商社の違いは個別記事で扱います。
Q文系はどの業界に行けますか?
業界ではなく職種で見ると考えやすくなります。営業・企画・管理・人事などの職種はほぼすべての業界にあり、メーカーやITなど理系のイメージが強い業界にも文系の採用枠があります。「文系向きの業界」と決めつけず、興味のある商流の中で職種を探してみてください。
「業界」の分け方はひとつではない|業種・職種との違い
結論から言うと、「業界」に公的な定義はありません。同じ種類の商品やサービスを扱う企業の集まりを指す慣用的な言葉です。一方で、統計の世界には明確な分類基準があります。両方を知っておくと、就活サイトごとに業界の区分が違う理由も納得できます。
統計の分け方: 日本標準産業分類の20大分類
総務省の日本標準産業分類は、統計調査の結果を産業別に示すために定められた統計基準です。最新は令和5年(2023年)7月の第14回改定で、令和6年(2024年)4月1日から実施されています(総務省「日本標準産業分類」、2026年9月26日閲覧)。
分類の基準は3つあります。生産に投入される財・サービスの種類、生産方法(設備や技術)、そして生産される財・サービスの用途や機能です。構成は大分類・中分類・小分類・細分類の4段階で、大分類はアルファベット、中分類は2桁の数字で表されます。複数の経済活動を行う事業所は、付加価値(または産出額・販売額・従業者数)が最も大きい活動でその産業が決まります(総務省「日本標準産業分類(第14回改定)一般原則」、2026年9月26日閲覧)。
大分類の20区分は、A 農業・林業、B 漁業、C 鉱業・採石業・砂利採取業、D 建設業、E 製造業、F 電気・ガス・熱供給・水道業、G 情報通信業、H 運輸業・郵便業、I 卸売業・小売業、J 金融業・保険業、K 不動産業・物品賃貸業、L 学術研究・専門技術サービス業、M 宿泊業・飲食サービス業、N 生活関連サービス業・娯楽業、O 教育・学習支援業、P 医療・福祉、Q 複合サービス事業、R サービス業(他に分類されないもの)、S 公務、T 分類不能の産業です(e-Stat「日本標準産業分類(令和5年7月改定)」、2026年9月26日閲覧)。なお総務省は、統計以外の用途にそのまま使う場合は目的が異なる点に注意が必要だとしています。就活の業界分けと完全には一致しない、と理解しておけば十分です。
就活の分け方: 8つ前後の業界と、業種・職種との違い
就活サイトで見る8分類は、この産業分類を就活生が見やすいように束ね直したものと考えると分かりやすくなります。たとえばE 製造業はまとめて「メーカー」、I 卸売業・小売業は「商社」と「小売」に分けられ、G 情報通信業は「IT・通信」と「マスコミ」の一部に振り分けられます。分け方の元が同じでも、束ね方が違うので媒体ごとに業界名が揺れるわけです。
業種・業界・職種の違いも整理しておきます。
言葉 | 指すもの | 例 |
|---|---|---|
業種 | 企業が行っている事業の種類。産業分類に近い | 製造業、卸売業、情報通信業 |
業界 | 同じ商品・サービスの市場で競う企業の集まり。話し手によって範囲が変わる | 食品業界、半導体業界、広告業界 |
職種 | 個人が担当する仕事の種類。どの業界にも共通して存在する | 営業、企画、開発、経理、人事 |
1社が複数の業界に属することもあります。自社工場で製品をつくりながら直営店で消費者に売る企業は、メーカーでも小売でもあります。「この会社は何業界か」を一意に決めようとして迷ったら、事業ごとに分けて考えてください。
モノが消費者に届くまでの業界の並び|商流で見ると業界がつながる

業界はバラバラに存在しているのではなく、1つの商品が消費者に届くまでの流れの中で役割を分担しています。この流れを商流と呼びます。商流で見ると、メーカーと商社と小売が別々の話ではなく、同じ線の上の違う位置だと分かります。
つくる→つなぐ→売る: モノの流れとお金の流れ
本線のプレイヤーは順に、素材メーカー(鉄・化学品・繊維など)、部品メーカー、完成品メーカー、商社・卸(総合商社・専門商社)、小売(スーパー・コンビニ・百貨店・専門店・EC)、そして消費者です。モノは左から右へ流れ、お金は右から左へ流れます。消費者が店で払った代金が、小売から商社へ、商社からメーカーへ、メーカーから素材メーカーへと遡っていくイメージです。
この「お金が遡る」感覚を持つと、BtoB企業の売上がどこから来ているかが見えます。素材メーカーの顧客は消費者ではありませんが、最終的に消費者が買わなければ素材も売れません。だから素材メーカーの営業も、最終製品の売れ行きを見ています。
流れの外側から支える業界(物流・金融・IT・広告・インフラ)
本線の外側には、流れ全体を横断して支える業界があります。物流はモノを運び保管します。金融はお金を貸し、決済し、リスクを引き受けます。ITはシステムで業務を動かします。広告・メディアは商品の存在を消費者に知らせます。コンサル・人材は企業の課題や人手を支えます。インフラ・エネルギーは電気・ガス・通信を供給します。建設・不動産は、工場・倉庫・店舗といった場所そのものを用意します。
具体例で見てみます。コンビニで売られているおにぎり1個を考えてください。米や海苔を扱う食品の素材メーカーがあり、包装フィルムをつくる化学メーカーがあります。原料の調達には専門商社が関わり、製造するのは食品メーカーです。できた商品はチルド温度帯の物流網で店舗へ運ばれ、コンビニ本部と加盟店が販売します。新商品の告知には広告が関わり、工場の設備投資には銀行の融資が関わります。この時点で8つ以上の業界が動いています。
志望業界を決めるとは、この流れのどこで働くかを決めることです。「食品に関わりたい」という興味は、素材メーカー、食品メーカー、専門商社、物流、小売のどこでも実現できます。関わり方が違うだけです。業界研究の初期段階では、興味のある商品を1つ決めて、その商流を書き出してみると候補が一気に増えます。
BtoBとBtoCの違い|顧客が変わると仕事も変わる

BtoBは企業や官公庁を顧客とする取引、BtoCは一般消費者を顧客とする取引です。どちらが良いという話ではなく、顧客が変われば取引額も売り方も仕事の進め方も変わる、という理解が重要です。
BtoBとBtoCの比較表
比較項目 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
主な顧客 | 企業・官公庁・団体 | 一般消費者 |
1件あたりの取引額 | 大きい傾向。継続契約も多い | 小さい傾向。件数で積み上げる |
買う人の決め方 | 複数部門が検討し、見積・稟議を経て決まる | 個人が店頭やネットで比較して決める |
売り方 | 担当営業が提案し、関係を継続する | 広告・店頭・ECで多数に届ける |
一般の知名度 | 低いことが多い | 高いことが多い |
新卒の仕事の例 | 法人営業、技術営業、調達、生産管理 | 店舗運営、販促、商品企画、カスタマーサポート |
注意したいのは、あなたが名前を知っている会社はBtoCに偏りやすいという点です。テレビCMや店頭で目にするのは消費者向けの商品だからです。一方で、部品・素材・業務用システム・物流・建材など、消費者の目に触れない領域にも多くの企業があります。BtoB企業は知名度が低いだけで、業界の数も企業の数も少なくありません。BtoBの業界一覧とBtoCの業界一覧を並べて見ると、候補の広さが変わります。
なお、両方の顧客を持つ業界もあります。銀行は法人融資と個人ローンの両方を扱い、不動産は法人向けオフィスと個人向け住宅の両方があります。完成品メーカーも、消費者向け製品と法人向け製品を併せ持つことが珍しくありません。IT企業も同様です。企業単位ではなく、事業単位でBtoB・BtoCを見分けてください。
メーカーと商社の違いも「商流のどこにいるか」で分かる
メーカーと商社の違いが分かりにくい、という声はよく聞きます。これも商流の位置と収益源で整理できます。
比較項目 | メーカー | 商社 |
|---|---|---|
商流上の位置 | つくる | つなぐ |
製品との関係 | 自社で企画・製造する | つくらずに仕入れる・取引を仲介する |
主な収益源 | 製品の販売差益 | 仲介の口銭、取引差益、事業投資からの収益 |
抱える機能 | 研究開発、工場、生産管理 | 調達網、在庫・物流、与信管理 |
総合商社と専門商社の違い、商社の事業投資の仕組みについては個別記事で詳しく扱う予定です。ここでは「つくる側か、つなぐ側か」という位置の違いだけ押さえておけば十分です。
業界一覧①|モノをつくる・つなぐ・売る業界

ここからは商流の本線にいる業界を、「誰に・何を・どう届けるか」の形式で並べます。末尾にBtoB・BtoCの区分を付けます。
メーカー(素材・部品・完成品)
「製造業の業界の種類は?」「メーカー業界にはどんな種類がありますか?」という疑問には、まず素材・部品・完成品の3層で答えるのが分かりやすい整理です。
- 素材メーカー: 部品メーカーや完成品メーカーに / 鉄・非鉄金属・化学品・樹脂・紙・繊維などを / 大量かつ安定した品質で供給します(BtoB)
- 部品・電子部品メーカー: 完成品メーカーに / モーター・半導体・センサー・ベアリングなどを / 設計段階から提案して納めます(BtoB)
- 完成品メーカー: 消費者や企業に / 自動車・家電・食品・日用品・医薬品・産業機械などを / 商社や小売を経由、または直販で届けます(両方)
完成品メーカーの中は分野でさらに細かく分かれます。食品、飲料、自動車、電機、精密機器、化学、医薬品、日用品、住宅設備、アパレルなどです。日本標準産業分類でもE 製造業は中分類が24と最も多く、分類上も幅の広い領域であることが分かります(e-Stat「日本標準産業分類(令和5年7月改定)」、2026年9月26日閲覧)。「メーカー志望」と言うだけでは範囲が広すぎるので、3層と分野の2段階で絞ると具体的になります。
商社(総合・専門)
- 総合商社: 国内外の企業に / エネルギー・金属・食料・機械など幅広い商材の取引を / 仲介し、加えて事業会社への投資や経営参画を行います(BtoB)
- 専門商社: 特定分野の企業に / 鉄鋼・化学品・食品・医療機器・電子部品などの商材を / 仕入れて販売し、在庫・物流・与信の機能を担います(BtoB)
商社の役割は「モノを右から左へ動かすだけ」ではありません。買い手が探しにくい調達先を見つける、まとめて在庫を持つ、支払いまでの信用を引き受ける、といった機能に価値があります。この機能を理解しておくと、面接での志望理由も具体的になります。
小売・EC
- 小売: 一般消費者に / 商社や完成品メーカーから仕入れた商品を / 店舗やネットで販売します(BtoC)
業態でスーパー、コンビニ、百貨店、ドラッグストア、ホームセンター、専門店、ECに分かれます。同じ「売る」でも、扱う商品数、立地の考え方、在庫の回し方が業態ごとに大きく違います。自社で企画した商品を自社で売るプライベートブランドを持つ企業は、メーカーの機能も併せ持ちます。新卒は店舗運営から入り、その後にバイヤー(仕入れ)や店舗開発へ進むケースが多いとされますが、配属や異動の流れは企業によって異なります。
物流・運輸
- 物流・倉庫: メーカー・商社・小売に / モノの輸送と保管、在庫管理や流通加工を / 陸運・海運・空運と倉庫網を組み合わせて提供します(主にBtoB)
- 旅客輸送: 消費者に / 移動そのものを / 鉄道・航空・バスなどで提供します(BtoC)
商流の本線を実際に動かしているのが物流です。温度帯の管理、納品時間の指定、通関手続きなど、商品ごとに求められる条件が違います。EC市場の広がりで、小口配送や倉庫の自動化といったテーマも増えています。なお、各業界の詳しい解説記事は順次追加していく予定です。
業界一覧②|お金・情報・仕組みで企業を支える業界

ここからは商流の外側から企業や消費者を支える業界です。この領域は顧客に企業が多く、BtoBが中心になります。収益源が何かを意識すると、業界ごとの違いが立ち上がります。
金融(銀行・証券・保険・リース)
- 銀行: 企業と個人に / 融資・預金・決済を / 店舗とネットの両方で提供します。収益源は貸出金利と手数料です(両方)
- 証券: 企業と投資家に / 資金調達の支援と株式・債券の売買仲介を / 引受業務や店舗・オンライン取引で提供します。収益源は手数料と引受報酬です(両方)
- 保険: 企業と個人に / 事故・病気・災害などのリスクの引き受けを / 保険料と引き換えに提供します。収益源は保険料と資産運用益です(両方)
- リース・クレジット: 企業と個人に / 設備や商品の購入・利用を / 分割払いや賃貸の形で支えます。収益源は手数料とリース料です(両方)
日本標準産業分類ではJ 金融業・保険業として1つの大分類にまとまっていますが、中身の機能はこのように分かれています。
IT・通信
「IT業界にはどんな種類がありますか?」という問いには、主な分け方の例として次の3つを挙げると整理しやすくなります。
- SIer・受託開発: 企業や官公庁に / 業務システムの設計・開発・運用を / 受託契約で提供します。収益源は開発費と保守運用費です(BtoB)
- Webサービス・アプリ: 消費者や企業に / 自社で企画・開発したサービスを / インターネット経由で継続提供します。収益源は利用料・広告費・手数料です(両方)
- 通信キャリア・インフラ: 消費者と企業に / 通信回線やネットワーク、データセンターを / 月額契約で提供します。収益源は通信料です(両方)
このほか、ハードウェアメーカー、セキュリティ、クラウド基盤などの区分もあります。ベンチャー・スタートアップの多くはWebサービス領域に属し、自社プロダクトの開発と提供を事業の中心に置いています。
広告・メディア
- 広告代理店: 広告主である企業に / 商品を消費者に知らせるための企画と媒体の売買を / 提案と運用の形で提供します。収益源は媒体取引の手数料と制作・運用のフィーです(BtoB)
- メディア(新聞・テレビ・出版・Web媒体): 消費者に / ニュースや番組、記事などのコンテンツを / 紙・放送・インターネットで届けます。収益源は広告費と購読料・課金です(両方)
広告業界を見るときは、顧客が広告主である企業だという点を押さえてください。消費者に向けた表現をつくる仕事であっても、お金を払うのは企業です。この二重構造が、広告の仕事の難しさと面白さの両方につながっています。
コンサル・人材
- コンサルティング: 企業や官公庁に / 経営・業務・IT・人事などの課題解決の支援を / プロジェクト契約で提供します。収益源はコンサルティングフィー(顧問料・プロジェクト報酬)です(BtoB)
- 人材: 企業と求職者の双方に / 採用の支援と就職・転職の機会を / 求人広告、人材紹介、人材派遣などの形で提供します(両方)
「人材業界にはどんな3種類ありますか?」という疑問への主な分け方の例は、求人広告(掲載料で稼ぐ)、人材紹介(採用決定時の成功報酬)、人材派遣(派遣料金)の3つです。ここに採用コンサルティングやHR SaaSを加えて見る場合もあります。収益源が違えば、営業の動き方も変わります。
インフラ・エネルギー・建設・不動産
- 電力・ガス・鉄道・水道・通信: 消費者と企業に / 社会の基盤となるサービスを / 設備を維持しながら継続供給します。収益源は利用料金です(両方)
- 建設: 発注者である企業や官公庁に / 建物・道路・プラントなどの設計施工を / 受注契約で提供します。収益源は工事の請負金額です(主にBtoB)
- 不動産: 企業と個人に / 土地建物の開発・販売・仲介・管理を / 用途に応じて提供します。収益源は開発利益、仲介手数料、賃料、管理費です(両方)
「不動産業界にはどんな3種類ありますか?」に対する主な分け方の例は、開発(デベロッパー)、流通(売買や賃貸の仲介)、管理の3つです。ここに不動産投資や運用を加えて4区分で見ることもあります。日本標準産業分類ではK 不動産業・物品賃貸業として整理されています(e-Stat「日本標準産業分類(令和5年7月改定)」、2026年9月26日閲覧)。
業界一覧③|人の暮らしに直接届ける業界と公共
最後に、消費者へ直接サービスを届ける領域と、営利企業ではない公共分野を見ます。この領域は人が人に向き合う仕事が中心で、店舗や施設が仕事の現場になります。
生活サービス・レジャー
- 飲食・宿泊・旅行・レジャー: 消費者に / 食事・滞在・移動・遊びといった体験を / 店舗や施設、予約サービスで提供します。収益源は利用料金です(BtoC)
- 美容・フィットネス・冠婚葬祭: 消費者に / 身体や人生の節目に関わるサービスを / 施設と専門スタッフで提供します(BtoC)
需要が季節や曜日、天候で動きやすく、人員配置や在庫の計画が仕事の中心になりやすい領域です。日本標準産業分類ではM 宿泊業・飲食サービス業、N 生活関連サービス業・娯楽業として分かれています。
医療・福祉・教育
- 医療・介護・調剤: 患者や利用者に / 診療・介護・服薬管理などのサービスを / 病院・施設・薬局で提供します。収入の多くは公的な保険制度に基づきます(主にBtoC)
- 教育: 学生や社会人に / 学びの機会を / 学校・塾・オンライン講座などで提供します。企業向けの研修事業はBtoBになります(両方)
医療・福祉は収入の多くが公的制度に基づく点が、他の業界と大きく違います。制度改定が事業環境に直結するため、業界研究では制度の仕組みを調べることが欠かせません。
官公庁・公社・団体
- 国・自治体・独立行政法人・業界団体・NPO: 市民や会員に / 公共サービスや制度の運営、業界内の調整を / 税や会費を原資として提供します
これらは営利企業ではないため、厳密には「業界」というより公共セクターとして見るのが適切です。就活の8分類では「官公庁・団体」としてまとめられることが多い領域です。
なお、この記事の一覧はすべての産業を尽くしてはいません。農業・林業・漁業や鉱業など、就活の8分類には収まりにくい分野も存在します。全体を漏れなく確認したい場合は、A〜Tの20大分類を並べているe-Stat「日本標準産業分類(令和5年7月改定)」(2026年9月26日閲覧)を見ると、O 教育・学習支援業、P 医療・福祉、S 公務まで含めた全体像が確認できます。職業そのものの内容を調べたいときは、厚生労働省の職業情報提供サイトも役立ちます。
身近な商品から業界をたどる練習|5つの例で表にする
業界一覧を眺めるだけでは、なかなか自分ごとになりません。おすすめは、身近な商品から商流を逆算する練習です。手順は3つです。①商品を1つ手に取る ②誰がつくり、誰が運び、誰が売ったかを書き出す ③それぞれの会社の顧客が企業か消費者かを書き添える。これだけで、自分の生活の中から業界と職種が見つかります。
身近な商品 | 関わる業界(商流順)と支える業界 | 新卒が就く職種の例 |
|---|---|---|
スマートフォン | 電子部品メーカー→完成品メーカー→通信キャリア→家電量販店・キャリアショップ(支える: 広告・物流・金融) | 技術営業、商品企画、店舗運営、法人営業 |
缶コーヒー | 原料商社→飲料メーカー→物流→コンビニ・自販機オペレーター(支える: 広告・容器メーカー) | ルート営業、生産管理、マーケティング、販売促進 |
賃貸マンション | 建設→不動産デベロッパー→不動産仲介・管理(支える: 銀行・保険・電力ガス) | 施工管理、用地仕入、賃貸仲介営業、建物管理 |
就活サイト | 人材・IT。顧客は企業(掲載料)と学生(無料)の両方(支える: 広告・メディア) | 法人営業、キャリアアドバイザー、Webエンジニア、編集 |
通学の電車 | 鉄道インフラ→車両メーカー→建設・電力(支える: IT(改札・決済)・広告(車内広告)) | 運輸営業、設備保守、駅ナカ事業開発、システム企画 |
就活サイトの例に注目してください。学生は無料で使いますが、お金を払っているのは掲載企業です。このようにお金を払う相手と使う相手が違うサービスは珍しくありません。誰が費用を負担しているかを確かめる習慣がつくと、業界研究の解像度が上がります。今日使った持ち物を1つ選んで、同じ形で書き出してみてください。
業界の比べ方と次の一歩|「知っている業界」から「置ける業界」へ

一覧を見終えたら、次は比べる段階です。比較の観点は4つに絞ると扱いやすくなります。
- 顧客は誰か。企業向けか、消費者向けか、両方か
- 収益源は何か。販売差益、手数料、広告費、利用料、受託費のどれか
- 商流のどこにいるか。つくる、つなぐ、売る、支える、直接届けるのどれか
- その業界にどんな職種があり、新卒は最初にどの職種から入るか
志望業界を決めるときは、「知っている業界」だけでなく「冒頭の表に置ける業界」まで候補を広げてください。知名度はBtoCに偏るので、知っている会社だけで選ぶと候補が自然と狭くなります。表に置いて比べる習慣がつけば、知名度ではなく仕事の中身で判断できます。
説明会やOB・OG訪問では、次の3つを聞くと理解が進みます。
- 主な顧客は企業と消費者のどちらで、その割合はどのくらいか
- 売上は何で立っているか(製品の販売、手数料、広告、利用料など)
- 新卒が最初に配属される職種と、そこで相手にする顧客は誰か
業界研究の具体的な進め方や、職種そのものの一覧は別の記事で扱います。個別業界の詳しい解説も順次追加していく予定です。
まとめ
業界の区分は絶対的なものではありません。統計基準では20の大分類、就活の現場では8つ前後という、目的の違う2つのものさしが併存しています。大切なのは名前を覚えることではなく、商流の位置と顧客の種類で企業を置けるようになることです。知名度の低いBtoB領域にも選択肢は数多くあります。まずは冒頭の2軸の表に、気になる業界を3つ書き込んでみてください。そこから調べる範囲を決めると、業界研究が前に進みます。