「広告代理店」と聞いて、電通や博報堂を思い浮かべる人は多いはずです。ただ、頭についている「総合」が何を指すのかまで説明できる学生は少ないです。この記事では、総合広告代理店が一社で担う機能、案件の中での立ち位置(商流)、専門広告代理店やハウスエージェンシーとの違いを、公式サイトで確認できる範囲の事実で整理します。ランキングや年収の比較はしません。

総合広告代理店とは?一社で「戦略からメディア・制作・実施まで」を担う広告会社

総合広告代理店とは、広告主(クライアント)の課題に対して、戦略立案・メディアの選定と買い付け・クリエイティブ制作・プロモーションの実施までを、一社でまとめて担える広告会社です。原則としてテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・交通・Web・映画といったすべての広告媒体を扱い、企画から制作までを総合的に手掛ける業態を指します。

最初に押さえておきたいのは、「総合」は規模や資本の分類ではないという点です。売上が大きいから総合、小さいから専門、という分け方ではありません。総合かどうかは、その会社が担える機能の範囲で決まります。電通や博報堂もこの分類に入りますが、「総合広告代理店=有名な大手数社」ではありません。

業界団体としては日本広告業協会(JAAA)があります。1950年に設立され、日本を代表する広告会社約140社が会員として加盟し、広告主・媒体社・協力機関とともに、広告を通じて企業とメディアと生活者を結ぶことを目指す団体です(日本広告業協会「協会について」、2026年9月26日閲覧)。つまり、あなたが名前を知っている数社の外側に、多くの広告会社があります。ただし、会員であること自体は「総合広告代理店である」ことを意味しません。会員社には特定の媒体や領域に重点を置く会社も含まれます。

呼び方についても補足します。「広告代理店」と「広告会社」は、ほぼ同じ対象を指す呼称です。各社の公式サイトでは「広告会社」「総合広告会社」という表記が多く使われています。この記事では公式表記に合わせて「総合広告会社」を主に使い、検索で使われる「総合広告代理店」も併記します。

よくある質問

Q総合広告代理店とは何ですか?
A

原則としてすべての広告媒体を扱い、戦略立案・メディアの選定と買い付け・クリエイティブ制作・プロモーションの実施までを一社で担える広告会社です。「総合」は売上規模や資本の大きさではなく、担える機能の範囲を表す分類です。大手数社だけを指す言葉ではありません。

Q総合広告代理店の強みは何ですか?
A

複数の媒体と施策を一つの提案にまとめられること、そして媒体社や制作会社との取引をまとめて広告主の窓口になれることです。テレビCMと交通広告、SNS動画、店頭施策を横断して設計できる点が特徴です。強みの中身は会社ごとに違うため、事業内容で確認してください。

Q総合広告代理店と専門広告代理店の違いは?
A

主な違いは扱う媒体と機能の範囲です。専門広告代理店は新聞・交通・求人など特定の媒体に特化します。一方ハウスエージェンシーは資本関係による分類で、特定企業グループの広告を担う会社です。分類の軸が違うため、総合でありながら特定グループの一員という会社も存在します。

Q総合広告代理店の大手はどこですか?
A

順位は付けませんが、電通や博報堂のほか、ADKグループ、東急エージェンシー、大広、読売広告社、ジェイアール東日本企画などが公式サイトで事業内容を確認できます。会社を探す入口としては日本広告業協会の会員社一覧が使えます。事業内容は各社の会社概要で確かめてください。

Q総合広告代理店の仕事内容は?
A

営業(アカウント)、ストラテジックプランナー、メディアプランナーやバイヤー、クリエイティブ職、プロモーション・PR、デジタル・データ職などがあります。機能ごとに役割が分かれています。新卒の入り方や職種区分は会社と年度で変わるため、最新の募集要項で確認しましょう。

総合広告会社が一社で担う4つの機能|戦略・メディア・クリエイティブ・プロモーション

戦略・メディア・クリエイティブ・プロモーションの4機能と主な職種を整理した図

「総合」の中身は、大きく4つの機能に分解できます。戦略・メディア・クリエイティブ・プロモーションです。この4つを一つの提案としてまとめられることが、総合広告代理店の仕事内容の骨格になります。

4つの機能と主な職種(表)

機能

何をするか

主な成果物

主に関わる職種

戦略・マーケティング

市場や生活者を調べ、広告主の課題を整理し、コミュニケーション戦略を組み立てる

提案書、戦略プラン、調査レポート

営業(アカウント)、ストラテジックプランナー

メディア

どの媒体にいくら配分するかを計画し、媒体社から広告枠を買い付ける

メディアプラン、出稿計画

メディアプランナー、メディアバイヤー

クリエイティブ

テレビCM・グラフィック・Web・動画などの表現を企画し、制作を進行する

広告表現(CM、ポスター、Webサイトなど)

クリエイティブディレクター、コピーライター、アートディレクター、プロデューサー

プロモーション・アクティベーション

店頭、イベント、キャンペーン、PR、デジタル施策を実施し運用する

施策の実施、効果の運用レポート

プロモーションプランナー、デジタル運用担当、PR担当

この4機能が一社の中に並んでいることは、各社の公式情報でも確認できます。東急エージェンシーは営業種目として「各種広告の代理業務」「広告宣伝に関する企画、立案ならびに制作」「情報の収集、計算、統計、分析および市場調査」「展覧会、見本市および各種催事の企画、実施」などを挙げています(東急エージェンシー「会社概要」、2026年9月26日閲覧)。大広も、新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・屋外・交通・映画・ダイレクトメールなどの広告取扱に加えて、マーケティングプランニング、広告の企画・制作、イベント企画などを事業内容に並べています(大広「会社概要」、2026年9月26日閲覧)。

注意したいのは、4機能のすべてを社内の人だけで完結させるわけではないことです。CM制作やWeb制作、調査などは外部のパートナーと組む場面が多くあります。それでも広告主から見れば窓口は一社です。この「まとめて窓口になる」構造を理解するには、次に説明する商流を押さえる必要があります。

デジタル・データが「総合」の範囲に入った

近年は、4つの機能に横串でデジタルとデータが入っています。電通は事業領域をMarketing・Business Transformation・Sports & Entertainmentの3つとし、基盤となるケイパビリティにPeople & Network、Creativity、Producing、Data & Technologyを掲げています(電通「Capabilities」、2026年9月26日閲覧)。ADKマーケティング・ソリューションズは「ADK CONNECT」として、Customer Data & Insights、Customer Contact Management、Customer Experience Designの3領域を示しています(ADKマーケティング・ソリューションズ「事業内容」、2026年9月26日閲覧)。データ分析や運用が、戦略やクリエイティブと並ぶ事業領域として扱われているわけです。

背景には広告費の構成の変化があります。2025年の日本の総広告費は8兆623億円で、そのうちインターネット広告費は4兆459億円、総広告費に占める構成比50.2%となり、初めて過半数になりました(電通「2025年 日本の広告費」、2026年9月26日閲覧)。マス四媒体とデジタルを切り離して考えにくくなったことが、総合広告会社の機能の範囲にも表れています。

商流と関係図|広告主・総合広告会社・媒体社・制作会社のあいだで何が動くか

広告主・総合広告会社・媒体社・制作会社の間で動く依頼と費用の商流図

総合広告会社の役割は、関係するプレイヤーを並べると理解しやすくなります。登場するのは主に次の5者です。

  • 広告主(クライアント):メーカーやサービス企業など。宣伝部・マーケティング部が窓口になることが多いです
  • 総合広告会社:広告主の窓口となり、戦略から実施までの全体を設計します
  • 媒体社:テレビ局、新聞社、出版社、鉄道会社、Webプラットフォームなど、広告枠を持つ側です
  • 制作会社:CM制作、グラフィック、Web制作、イベント施工などの実制作を担う側です
  • 調査会社・データ会社:必要に応じて調査や分析で加わります

依頼の流れ:相談→提案→発注

案件はまず広告主の相談から始まります。課題・予算・期間などの条件が共有される場(オリエンテーション)があり、総合広告会社は戦略・メディア・クリエイティブ・プロモーションをまとめた提案を持ち込みます。複数の広告会社が同じ課題に提案するコンペの形になることもあります。採用された後は、総合広告会社が媒体社へ広告枠を発注し、制作会社へ制作を発注します。

架空の例で考えると具体的になります。飲料メーカーが新商品を発売するとします。ターゲットの設定、テレビCM、駅のポスター、SNS向けの縦型動画、店頭の試飲施策までを、一つの提案書として組み立てるのが総合広告会社の仕事です。媒体ごとにばらばらの会社へ依頼するのではなく、全体の設計と役割分担を一社が引き受けます。

なお、広告会社同士が組んで一つの提案に参加することもあります。2015〜17年ごろ、当時在籍していたデジタル専業の広告会社では、電鉄系のハウスエージェンシーから声がかかり、そのチームの一員として広告主へのデジタル施策の提案に入る案件がありました。当時の一例ですが、「一社で全部」ではなく「窓口が一社で、得意分野を持ち寄る」形も現場にはあります。

お金の流れと広告の流れ

お金は、広告主から総合広告会社へ、媒体費・制作費・企画費として支払われます。総合広告会社はそこから媒体社へ媒体費、制作会社へ制作費を支払います。総合広告会社の収入は、媒体費に対する手数料や、企画・運用に対するフィーが中心です。料率や契約の形は案件・会社によって異なるため、料金体系の詳細は広告代理店の仕組みを扱う記事に譲ります。

広告そのもの(モノ)の流れも押さえておきましょう。制作会社が作った素材を総合広告会社が確認し、媒体社へ入稿します。媒体社が放送・掲載・配信を行い、結果のデータは総合広告会社が集約して広告主に報告します。Web広告のように配信後も調整が続く施策では、この報告と改善の往復が案件の中心になります。

この流れの中で「総合」が意味するのは、複数の媒体社・制作会社をまとめて一つの窓口になれることです。扱う媒体が多いこと自体が価値なのではなく、媒体をまたいだ設計と発注を引き受けられることが役割になります。

総合・専門・ハウスエージェンシー・デジタル専業の違い(比較表)

総合広告会社とデジタル専業の媒体・顧客・強みを並べて比べた比較図

結論から言えば、広告代理店の中の一分類が総合広告代理店です。「広告代理店と総合広告代理店の違い」は、大きい枠と、その中の業態の違いと考えると整理できます。

分類の軸は「機能」「媒体」「資本」の3つ

広告会社を分けるときの軸は主に3つあります。担える機能の範囲(総合か、特定機能か)、扱う媒体(全媒体か、特定媒体か)、そして資本関係(独立系か、特定企業グループの一員か)です。重要なのは、この3軸が排他ではないことです。同じ会社が「総合」であり、かつ「特定グループの子会社」でもあり得ます。東急エージェンシーは公式サイトで東急グループの総合広告会社と説明し、渋谷スクランブル交差点周辺の屋外・車両・駅構内の広告を扱うTOKYU OOHなどの独自領域を持ちます(東急エージェンシー 公式サイト、2026年9月26日閲覧)。ジェイアール東日本企画はJR東日本グループで、広告・コミュニケーションデザイン、交通メディア、地域創生・地域活性化事業、コンテンツビジネスを事業領域に挙げています(ジェイアール東日本企画 公式サイト、2026年9月26日閲覧)。

比較項目

総合広告会社

専門広告会社

ハウスエージェンシー

デジタル専業

分類の軸

機能の範囲

扱う媒体

資本関係

媒体+機能

扱う媒体・領域

原則すべての媒体と、戦略から実施までの全機能

新聞・交通・求人など特定の媒体に特化

親会社グループの広告・販促全般

インターネット広告、デジタルマーケティング中心

主な顧客

幅広い業種の広告主

その媒体に出稿したい広告主

主に親会社とグループ企業

幅広い業種の広告主

強み

複数媒体・複数施策を一つの企画にまとめる力、媒体社との取引

特定媒体の知識と枠の確保力

親会社の商品・販売網・顧客を深く知っていること

運用型広告の運用、データ分析、改善の速さ

公式情報で確認できる例

東急エージェンシー(公式サイトで「東急グループの総合広告会社」と説明)

特定媒体に特化した広告会社(本記事では社名を挙げません)

Hondaのハウスエージェンシー事業(調査・販促・ディーラー支援・イベント・デジタル)

オプト(事業内容は「マーケティング事業」)

表の例の出典を補足します。Hondaはハウスエージェンシー事業として、マーケティング・調査、販促やプロモーションの企画、エリア特性に合わせたディーラー支援、デジタルマーケティング、イベントの企画・運営などを挙げ、メーカー・ディーラー・顧客を調査から実行までつなぐ役割を掲げています(Honda「HSJ ハウスエージェンシー事業」、2026年9月26日閲覧)。オプトは事業内容を「マーケティング事業」とし、インハウス支援・経営支援・アドテクノロジー支援などのサービスを示しています(オプト「会社概要」、2026年9月26日閲覧)。

デジタル専業は「総合の一部機能を切り出した下請け」ではありません。広告主と直接契約し、運用や分析を継続的に担うことが一般的です。同じ広告主の案件に、総合広告会社とデジタル専業が並んで関わる場面もあります。

ここで一つ、就活の軸として役立つ視点を挙げます。広告会社は、会社によって扱う商材がかなり違います。Web・デジタル中心の会社、テレビCMなどオフライン中心の会社、近年はタクシー広告のような特定メディアを軸にする会社もあります。さらに広告の外側には、SEOを専門にする会社も数多くあります。「マーケティング」という大きな言葉の中で、自分が興味を持っているのは表現なのか、媒体なのか、データによる改善なのか。ここを言葉にしておくと、総合とデジタル専業のどちらを見るべきかが自然に絞れます。

制作会社は「代理店」ではない

混同されやすいのが制作会社です。CM制作会社、Web制作会社、デザイン事務所などは、広告主または広告会社から制作を請ける側で、商流上の役割が広告会社と異なります。広告会社は媒体を含む全体の設計と発注を担い、制作会社は表現やシステムを実際に作ります。どちらが上という話ではなく、責任範囲が違います。「表現そのものを作りたい」のか「課題の設定から媒体の選定まで関わりたい」のかで、見るべき会社の種類が変わります。

総合広告代理店は電通・博報堂だけではない|公式情報で確認できる企業の例

持株会社と事業会社の役割の違いと応募先の関係を示した図

「総合広告代理店 一覧」を探している人向けに、公式サイトで事業内容を確認できる会社の例を挙げます。掲載は順不同(ほぼ五十音順)で、売上や順位の比較は行いません。従業員数は規模の目安として時点付きで記載し、企業間の優劣を示すものではありません。

企業の例(順不同・公式サイトで確認できる事実だけ)

会社名

グループ・資本関係

公式サイトに記載の事業・領域

従業員数(公式・時点)

ADKグループ

純粋持株会社ADKホールディングスの下に事業会社

ADKマーケティング・ソリューションズ(デジタルプランニング、メディアバイイング、データマーケティングなどの統合ソリューション)、ADKクリエイティブ・ワン(デジタル・クリエイティブ領域の企画から制作)、ADKエモーションズ(コンテンツの企画・制作、アニメ版権のマーケティング)

ADKマーケティング・ソリューションズ約1,600名、ADKクリエイティブ・ワン約280名、ADKエモーションズ約130名

ジェイアール東日本企画

JR東日本グループ(1988年設立)

広告・コミュニケーションデザイン、交通メディア、地域創生・地域活性化事業、コンテンツビジネス

1,229人(2026年4月現在)

大広

博報堂DYホールディングスのグループ会社(1944年設立、本社は大阪市北区)

新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・屋外・交通・映画・DMなどの広告取扱、マーケティングプランニング、広告の企画・制作、イベント企画、出版

634名(2026年4月1日現在)

株式会社電通

1901年創業。純粋持株会社は電通グループ株式会社(国内事業はdentsu Japanの区分)

Marketing、Business Transformation、Sports & Entertainmentの3領域

公式サイトの会社情報を参照

東急エージェンシー

東急グループ

各種広告の代理業務、広告の企画・立案・制作、市場調査、催事の企画実施。ビジネスデザイン、コミュニケーションデザイン、メディアソリューション、CRM、空間創造、TOKYU OOH、スポーツマーケティングなど

1,131名(2026年3月31日現在)

博報堂

博報堂DYホールディングスの主要グループ会社(同社グループには大広、読売広告社、Hakuhodo DY ONE、SOLDOUT、オプトなども)

持株会社サイトでグループ各社の位置づけとIR情報を公開

公式サイトの会社情報を参照

読売広告社

博報堂DYグループ(創業1929年、設立1946年)

CIVIC PRIDE(R)コンサルティング、インストアコンサルティング、デジタルコンサルティング、事業開発、マーケティング、クリエイティブ、アクティベーション、メディアビジネス、PRの9領域

598名(2026年6月1日現在)

各社の出典は次のとおりです。ADKグループの4社構成と人数はADKホールディングス「会社概要」、電通の創業年と事業領域は電通「会社情報」、ジェイアール東日本企画の従業員数と事業領域はジェイアール東日本企画「会社概要」、読売広告社の9領域と従業員数は読売広告社「会社概要」、博報堂DYグループの構成は博報堂DYホールディングス 公式サイトで確認できます(いずれも2026年9月26日閲覧)。

持株会社と事業会社の違いに注意する

表を見るときの注意点が2つあります。1つ目は、同じグループの中に持株会社と事業会社があることです。電通グループ株式会社、博報堂DYホールディングス、ADKホールディングスは持株会社で、グループ戦略やコーポレート機能を担います。実際に広告の仕事を行うのは、株式会社電通、博報堂、ADKマーケティング・ソリューションズなどの事業会社です。就活で応募するのは原則として事業会社側なので、企業研究では法人名まで見分ける必要があります。

2つ目は、ここに載せた会社が総合のすべてではないことです。探す入口としては、日本広告業協会「会員社一覧」(2026年9月26日閲覧)が使えます。五十音順で会員社が並んでおり、名前を知らなかった会社に出会えます。ただし会員区分に「総合」「専門」の分類はありません。会員であること=総合広告代理店ではないので、事業内容は各社の会社概要で確認してください。

2020年代の動き|広告会社の再編と、広告以外からの参入

業界の形は固定ではありません。たとえばオプトは会社概要で主要株主を博報堂DYホールディングスと記載しており、デジタル専業の広告会社が総合広告会社グループの一員になる形の再編が起きています(オプト「会社概要」、博報堂DYホールディングス 公式サイト、2026年9月26日閲覧)。また、広告会社以外の会社が、マーケティングやデジタル領域の支援に参入する動きもあります。志望先を「広告代理店」という枠だけで探すと、やりたい仕事に近い会社を見落とすことがあります。機能で考える癖をつけておくと探す範囲が広がります。

総合広告会社の中の職種と、新卒はどこから入るか

総合広告会社の職種は、先に挙げた4つの機能と対応しています。どの機能の担い手になりたいかが、志望する職種の出発点になります。

機能ごとの主な職種

  • 営業(アカウント):広告主の窓口として課題を預かり、社内外のチームをまとめて案件を進めます
  • ストラテジックプランナー:調査やデータをもとに戦略を設計します
  • メディアプランナー・メディアバイヤー:媒体計画の立案と、媒体社からの広告枠の買い付けを担います
  • クリエイティブ職(クリエイティブディレクター、コピーライター、アートディレクター、プロデューサー):表現の企画と制作進行を担います
  • プロモーション・PR・イベント:店頭、キャンペーン、イベントなどの実施を担います
  • デジタル・データ職(運用、分析、テクノロジー):4機能に横串で関わり、配信の運用や効果検証を行います

それぞれの1日の流れや成果物は、職種別の記事で詳しく扱います。ここでは「営業=売る人」ではなく、案件全体を動かす進行と提案の役割だと理解しておくと十分です。

募集要項で見る3つのこと(採用主体・職種別か一括か・インターンの領域)

新卒の入り方は会社ごとに違います。だからこそ、募集要項を読むときの観点を決めておくと比較が楽になります。見るのは次の3点です。

1点目は採用主体です。どの法人が採用しているかを確認します。電通は株式会社電通として新卒採用・キャリア採用・インターンシップを案内しています(電通「採用情報」、2026年9月26日閲覧)。博報堂の新卒採用サイトは、博報堂や博報堂DYメディアパートナーズなど複数社の窓口になっています(博報堂 新卒採用サイト「ハクスク」、2026年9月26日閲覧)。2点目は、職種別採用か、入社後に配属が決まる方式かです。職種の区分名は年度によって変わるため、最新の募集要項で確認してください。3点目はインターンシップの領域です。電通はデザイン、アイデア、メディア・コンテンツ、データサイエンス、テクノロジーなどの領域別プログラムを案内し、博報堂はビジネスデザイン領域の冬インターンシップを実施しています。プログラムの領域は、その会社が新卒に期待する機能を映しているので、企業研究の材料になります。

総合広告会社の比べ方|4つの観点と説明会で聞く質問

広告会社を比較する4つの観点と説明会での質問例をまとめたチェックリスト図

会社を比べるときは、売上順位や年収ではなく、この記事で説明した「機能」「商流」「資本」の観点で並べると違いが見えます。観点は4つです。

1つ目は、持株会社と事業会社の関係です。自分が入る法人がグループ内でどの機能を担っているかを確認します。ADKグループは持株会社と3つの事業会社が機能で分かれており、博報堂DYグループには博報堂・大広・読売広告社・Hakuhodo DY ONEなど複数の事業会社があります。2つ目は、機能の範囲と内製・外製です。メディア、クリエイティブ、デジタル運用、制作のどこまでを社内やグループ会社で持ち、どこから外部に出しているかで、若手が関わる業務の幅が変わります。

3つ目は、資本・親グループの有無です。東急グループやJR東日本グループのように親グループを持つ会社は、グループの媒体(OOHや交通メディア)やグループ企業の案件を事業領域として公式サイトに明記しています。それが自分のやりたい仕事と重なるかを見ます。4つ目は、職種と配属の決まり方です。職種別採用か一括採用か、配属がいつ決まるかは、入社後3年の過ごし方に直結します。志望動機を書くときも、この4点のどこに惹かれたのかを言葉にすると具体性が出ます。

調べ方は、各社の会社概要・事業内容・統合報告書やIR資料・採用サイトの募集要項、そして日本広告業協会の会員社一覧です。そのうえで、説明会やOB・OG訪問では次のような質問が有効です。

  • 新人はどの職種・どんな案件から担当することが多いですか
  • 制作やデジタル運用は、社内・グループ会社・外部のどこが担っていますか
  • メディアの買い付けは自社で行いますか、グループ会社が担いますか
  • 配属はいつ、どのように決まりますか

「大手だから総合」「規模が小さいから専門」という思い込みは、公式情報で確かめると崩れることがあります。分類のラベルではなく、担っている機能で会社を見る姿勢が、面接での説明の精度も上げます。

まとめ

この記事の要点を整理します。総合広告代理店は機能の分類で、戦略・メディア・クリエイティブ・プロモーションを一社で担える広告会社を指します。商流の中では、複数の媒体社や制作会社をまとめる窓口という立ち位置です。総合・専門・ハウスエージェンシー・デジタル専業は排他の関係ではなく、機能・媒体・資本という別の軸で切った呼び方です。そして、公式サイトで事業内容を確認できる総合広告会社は電通・博報堂以外にも複数あり、応募先になるのは原則として持株会社ではなく事業会社です。

次の一手は具体的にしておきましょう。気になる会社を3社選び、それぞれの「会社概要・事業内容」と「募集要項」を開いてください。そして、持株会社と事業会社の関係、機能の範囲と内製・外製、親グループの有無、職種と配属の決まり方の4点を並べて書き出します。ラベルではなく機能で比べた記録が、そのまま企業研究のメモになります。