法人営業とは?個人営業との違いを表で整理

法人営業と個人営業の相手・予算・期間・提案内容の違いを比べた比較図

法人営業とは、企業や団体を相手に、会社の運営に必要な商品・システム・サービスを提案し、受注する仕事です。英語表記から「BtoB営業」とも呼ばれます。厚生労働省の職業情報提供サイトでは、法人営業は主に企業を相手に営業をかける仕事で、会社運営に必要なシステムや商品を企業の事業担当者や社長に向けて紹介すると説明されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「営業の仕事」、2026年9月26日閲覧)。

同サイトでは、営業は「勤務先の企業形態(メーカー営業・代理店営業・商社営業)」「対象顧客(法人営業・個人営業)」「営業方法(新規開拓営業・ルート営業・反響営業・飛び込み営業)」の3つの切り口で分類されています。法人営業は、このうち対象顧客による分類の1つです。営業全体の分類は別記事で扱うため、ここでは位置づけの確認にとどめます。

法人営業と個人営業の違いを、相手とお金の出どころから整理すると次のようになります。

項目

法人営業(BtoB)

個人営業(BtoC)

相手

企業の担当者と決裁者

一般消費者本人

買うお金

会社の予算。社内協議や稟議を経る

本人の財布。その場で決まることもある

決まるまでの期間

数週間〜数か月になりやすい

比較的短い

1件の金額

大きくなりやすい

相対的に小さい

提案の中身

相手の業務や数字に基づく資料

本人の生活や好みに合わせた説明

評価のされ方

受注額や継続の状況など

契約数や売上で評価されることが多い

job tagには、企業相手は会社のお金を使うため信用を得られないと使ってもらえないこと、社内協議が必要で即決できないことが多いこと、動く金額が大きいことが記載されています。個人営業については、当事者間の信頼関係が購入判断に影響し、契約数や売上により評価されることが多いと書かれています。

「法人営業と個人営業のどちらが向いているか」は、性格の明るさや話し上手かどうかだけでは決めにくいものです。会社の予算を使うという判断に、数週間から数か月にわたって付き合う仕事かどうか、という違いで考えるほうが実態に近いです。なお同じ「営業」でも、会社によって職種名と担当範囲は変わります。広告会社では顧客窓口の職種が「アカウントプランナー」などの名前で募集されることもあり、求人票の職種名だけでは仕事の範囲は分かりません。募集要項の業務内容まで読む必要があります。

よくある質問

Q法人営業と個人営業のどちらが向いていますか?
A

性格で決めるより、判断の相手と期間で考えるのが実務的です。法人営業は会社の予算を使う判断に数週間〜数か月付き合う仕事で、社内協議が必要で即決できないことが多いとされます。個人営業は消費者本人の判断に短い期間で寄り添う仕事です。どちらの時間の流れが自分に合うかで比べてみてください。

Q法人営業に向いている人はどんな人ですか?
A

job tagの「コンサルティング営業(IT)」ではスキル評価値が傾聴力3.9、交渉3.5、説明力3.5、文章力3.4、読解力3.3と示されています。話し上手であること以上に、聞いた内容を提案書や議事録に書き起こせることが重視される職種だと読み取れます。書く作業に抵抗がない人は適応しやすいでしょう。

Q法人営業の新規開拓で大変なのはどんな場面ですか?
A

job tagは、新規開拓営業は知らない相手に一から説明する必要があるため断られることが多いと記載しています。加えて、企業相手は社内協議が必要で即決できないため、返事を待つ期間も長くなります。会社によっては上司が同席する形や、問い合わせ対応から始める配属もあります。

Q法人営業に資格や学部は必要ですか?
A

job tagの「コンサルティング営業(IT)」「OA機器営業」はいずれも、特に学歴や資格は必要とされないと記載しています。前者は理系・文系に関わらず入職するとあり、学歴の回答では大卒が7割台を占めます。入職後に商材に関する資格を取る人もいます。

Q文系でも技術的な商材の法人営業はできますか?
A

job tagの「コンサルティング営業(IT)」には、理系・文系に関わらず入職し、入社後に営業部署へ配属されて技術知識を学ぶ場合があると記載されています。商談にはシステムエンジニアが同行し、提案書も開発部門と一緒にまとめるとされており、技術者と組む前提の職種だと理解しておくとよいでしょう。

法人営業の関係図|顧客の担当者・決裁者と、自社の技術・制作・運用

法人営業を中心に顧客の担当者・決裁者・関係部署と自社の技術や運用がつながる関係図

法人営業を理解する近道は、登場人物を先に押さえることです。法人営業は一人で売り切る仕事ではなく、顧客側の複数の関係者と、自社側の専門家をつなぐ役割だからです。job tagの「コンサルティング営業(IT)」には、システムエンジニアと顧客先を訪問して技術的課題を聞き、開発部門と一緒に提案書をまとめるとあり、大きな案件では複数のSEと共同で対応すると記載されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「コンサルティング営業(IT)」、2026年9月26日閲覧)。

顧客側: 窓口の担当者・部門長・決裁者・関係部署

顧客側で最初に会うのは、課題を抱えている部署の担当者です。たとえば勤怠管理の見直しなら総務課の担当者が窓口になります。この担当者が社内で企画をまとめ、部門長が予算の一次判断をします。金額が大きくなるほど、最終的な決裁者は役員や社長へと上がります。job tagにも、大規模な商材では経営者層へ営業すると記載されています。

窓口の担当者と決裁者以外にも、確認が必要な部署があります。システムを入れるなら情報システム部門、支払い条件なら経理、契約条文なら法務です。商談が進んだ段階で「情報システム部門から質問が来ました」と連絡が入るのは、法人営業ではよくある展開です。営業は、担当者一人を説得すれば終わりではなく、その後ろにいる人たちの疑問まで想定して資料を用意します。

自社側: 営業・技術・制作/運用・営業事務

自社側にも分担があります。営業である自分は顧客との折衝と社内の調整を担い、上司が提案内容や値引きを承認します。技術・SEは要件を確認して概要設計と工数を出し、見積の根拠をつくります。受注後に実際に納める制作・運用・導入支援の担当、見積書や契約書・請求を整える営業事務や経理も関わります。

この分担は、会社の規模や業態によって細かさが変わります。筆者の経験では、2015〜17年ごろに在籍していたデジタル専業の広告会社では、社内が役割ごとに細かく分かれており、提案書の一部や広告の運用は別の職種が担当していました。営業の主な仕事は顧客との折衝と社内への橋渡しで、すべてを自分で作るわけではありませんでした。現在の業界標準を示すものではありませんが、「営業がどこまで作るか」は会社ごとに違うという点は、志望企業ごとに確認する価値があります。

情報の流れは一方通行ではありません。顧客の課題を営業が聞き取って社内に持ち帰り、技術と提案書・見積を作る。顧客の担当者がそれを社内で説明し、決裁者に上げる。受注後は運用や制作へ引き継ぎ、納品後の状況を営業が顧客に確認して、また社内に戻す。この往復が法人営業の日常です。job tagが「社内協議が必要で即決できないことが多い」と書くとおり、決裁が複数段階になるからこそ、営業には情報を正確に運ぶ役割が求められます。

架空の1案件で追う法人営業の流れ①|初回接点から課題ヒアリング・提案書まで

ここからは架空例として、1つの案件を最初から最後まで追います。設定は「従業員約300人の製造業の総務部門に、クラウド型の勤怠・経費精算サービスを提案する」案件です。実在の企業やサービスとは関係ありません。

①接点づくり。新規開拓の場合、接点は展示会で交換した名刺、自社サイトへの問い合わせ、既存顧客からの紹介、電話やメールでのアプローチなどから生まれます。接点は自社単独とは限りません。筆者が2015〜17年ごろに在籍していたデジタル専業の広告会社では、関係のある会社から声をかけられて一緒に提案に入る形もありました。たとえば電鉄系のハウスエージェンシー(親会社グループの広告を扱う会社)と組み、先方が持つ顧客に共同で提案するようなケースです。自分で一から開拓する以外の入口があることは、知っておくと業界研究が進みます。

初回訪問で聞く5つのこと(業務の流れ・困りごと・関係部署・予算の時期・決める人)

②初回訪問、またはオンラインの商談。相手は総務課の担当者です。ここで聞くべきことは、おおむね次の5つに整理できます。

  • 今の業務の流れ: 申請は紙かシステムか、承認は何段階か、締め日前後の残業はどれくらいか
  • 困りごと: 集計に時間がかかる、差し戻しが多いなど、担当者が実際に困っている場面
  • 関係部署: 情報システム部門、経理、現場の工場など、導入時に確認が必要な部署
  • 予算の時期: 次の予算をいつ組むか、今期の残予算で動けるか
  • 決める人: 部門長までで決まるのか、役員会にかかるのか

この5点は、顧客のニーズを把握するためだけでなく、案件がいつ・どの順番で進むかを見立てるための情報です。初回から「決める人は誰ですか」と単刀直入に聞きにくければ、「社内で進める際、どなたにご説明が必要になりますか」と業務の手順として尋ねます。

③持ち帰り。訪問後は議事録を書き、上司と技術担当に共有します。議事録は自分の備忘録ではなく、社内の人が読んで提案を組み立てられる資料です。

提案書の構成例(架空例)

④提案書の作成。job tagの「コンサルティング営業(IT)」では、顧客の経営上の諸問題を調査・把握してシステム導入を提案する資料を作成するタスクの実施率が76.5%、導入したいシステムの内容や予算を把握して導入案を作成するタスクが72.5%と示されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「コンサルティング営業(IT)」、2026年9月26日閲覧。これらは当該職業に就いている人への調査結果です)。提案書づくりは、法人営業の中心業務の1つだと分かります。

架空例の提案書は、次の順番で構成します。

  1. 現状の課題: 紙の申請と手集計で、締め日から給与計算までが5営業日かかっている
  2. 原因: 申請の不備による差し戻しと、拠点ごとに異なる運用
  3. 提案する仕組み: クラウドでの申請・承認と、経費精算の一元化
  4. 導入後の業務の流れ: 誰が何を入力し、誰が承認し、いつ確定するか
  5. 効果の見込み: 集計作業の削減見込みと、差し戻しの減少
  6. 導入スケジュール: 設定・テスト・研修・本稼働の時期
  7. 体制: 自社側と顧客側の担当者
  8. 費用の概算: 初期費用と月額の目安

この中で、技術担当は仕組みと工数を、営業は課題の整理と効果の見込み、スケジュールを担当することが多い構成です。⑤2回目の訪問で提案書を説明し、担当者から出た質問(他部署の懸念、既存システムとの連携可否)を持ち帰ります。ここで即答せず、技術に確認して正確に返すほうが信用につながります。

架空の1案件で追う法人営業の流れ②|見積・社内調整・稟議から受注まで

接点づくりから提案・見積・稟議・契約までの法人営業1案件の進行を示すタイムライン図

提案書を出した後は、金額と仕様を詰める工程に入ります。法人営業の中でも、顧客と社内の往復が多くなりやすい場面です。

見積は「技術の工数×営業の調整」で決まる

⑥見積。技術担当が出した工数と機器・ライセンスの構成をもとに、営業事務が見積書を整えます。値引きや支払い条件の相談は、営業の一存ではなく上司の判断が必要です。job tagの「コンサルティング営業(IT)」では、コスト計算を行い価格を算出するタスクの実施率が76.5%、見積書を提示し契約を締結するが80.4%、顧客の意向や予算に応じてシステム仕様を調整するが84.3%と示されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「コンサルティング営業(IT)」、2026年9月26日閲覧)。仕様の調整がもっとも高い実施率になっている点は、法人営業の実態をよく表しています。

架空例では、顧客の予算が想定より低いことが分かりました。そこで「初年度は本社と1拠点だけ導入し、翌年度に全拠点へ広げる」という分割案を技術と作り直します。値段を下げるのではなく、範囲と時期を組み替えて予算に収める。この組み替えが、法人営業の提案の腕の見せどころです。受注額や売上の規模は、この段階の設計に大きく左右されます。

稟議に時間がかかる理由と、待っている間の営業の動き

⑦顧客側の社内調整。担当者は部門長、経理、情報システム部門に説明します。ここで営業に求められるのは、担当者の代わりに社内を説得することではありません。担当者が社内で説明しやすい材料を渡すことです。架空例では、他社サービスとの比較を1枚にまとめた表と、想定される質問への回答(セキュリティ、既存の給与システムとの連携、導入時の現場負担)を用意しました。

⑧稟議・決裁。金額が大きいほど決裁者は上がり、job tagにも大規模な商材では経営者層へ営業すると記載されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「営業の仕事」、2026年9月26日閲覧)。時間がかかる理由は、担当者の熱意不足ではなく、予算の計上時期、他案件との優先順位、関係部署との協議といった手続き上の事情がほとんどです。

返事が来ない期間にできることはあります。進捗を確認する短い連絡を入れる、稟議で出た質問に追加資料で答える、導入時期が後ろにずれた場合のスケジュール案を先に用意する、といった動きです。待つ時間を、次の商談の準備に充てるのも実務的な判断になります。

⑨契約。契約書は法務や営業事務と条文を確認し、押印または電子契約で締結します。ここで案件が終わるわけではありません。受注は、納品と運用が始まる合図です。

架空の1案件で追う法人営業の流れ③|受注後の引き継ぎ・導入・フォロー

受注後の引き継ぎから導入・フォロー・次の提案までの流れを示すタイムライン図

法人営業の仕事は受注で終わりません。納品後に使われて初めて、次の取引につながるからです。

⑩社内への引き継ぎ。導入支援・運用・制作の担当に、顧客の業務の流れ、決まった仕様、約束したスケジュール、顧客側の担当者と決裁者が何を気にしているかを渡します。このとき作るのが受注報告と要件のまとめです。口頭だけで引き継ぐと、現場で「聞いていない」が起きます。引き継ぎ資料も営業の成果物の1つです。

⑪導入。キックオフの打ち合わせには営業も同席し、設定やデータ移行は運用・技術が担当します。営業は顧客の窓口を続け、予定どおり進んでいるかを見ます。job tagの「OA機器営業」には、受注が決まれば契約書の締結・商品の納入・説明を行い、納入後は技術者と連携して操作説明会を実施すると記載されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「OA機器営業」、2026年9月26日閲覧)。「コンサルティング営業(IT)」にも、開発部門と一緒に提案書をまとめ、納品後のアフターケアを担当する場合があると書かれています。納品後も営業が関わる職場は多いと考えてよいでしょう。

⑫フォロー。架空例では、本稼働から2か月後に総務課を訪問し、申請の差し戻しが減ったか、締め日前後の残業が変わったかを確認します。うまく使われていない機能があれば、運用担当と一緒に使い方を提案します。ここで見えた次の課題が、他拠点への展開や上位プランの追加といった次の提案につながります。この時点から、その顧客は既存顧客となり、ルート営業の対象になります。最初の接点から納品後のフォローまでで、法人営業の1周が終わります。

法人営業の成果物一覧|提案書・見積書・議事録・契約書・報告書

議事録から提案書・見積書・契約書・引き継ぎ資料まで法人営業の成果物をまとめた図

法人営業の仕事を具体的に知るには、何を作っているかを見るのがいちばん早い方法です。主な成果物を段階順に整理します。

成果物

誰に向けて

どの段階で

主に誰が作るか

議事録

社内・顧客の担当者

訪問や商談のたび

営業

提案書

顧客の担当者と決裁者

商談の中盤

営業+技術

見積書

顧客の担当者・経理

提案後

営業事務+技術の工数

比較表・想定問答

顧客の担当者(社内説明用)

稟議前

営業

契約書

顧客の法務・決裁者

受注時

営業事務・法務

受注報告・引き継ぎ資料

自社の運用・制作

受注直後

営業

訪問・活動報告

自社の上司

日次〜週次

営業

並べてみると、法人営業は「話す仕事」より「書く仕事」の比重が大きいと分かります。job tagの「コンサルティング営業(IT)」では、よく使う道具としてコミュニケーションツール、表計算ソフト、プレゼン資料作成ソフトが挙げられています。またスキルの評価値は、傾聴力3.9、交渉3.5、説明力3.5に対して、文章力3.4、読解力3.3と、書く力・読む力が近い水準で並びます(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「コンサルティング営業(IT)」、2026年9月26日閲覧。5段階の評価値です)。聞いた内容を資料に落とし込める人が業務を進めやすい職種だといえます。

新規開拓とルート営業の違いと、法人営業の1日の流れ

新規開拓営業とルート営業の相手・仕事・期間・成果物の違いを並べた比較図

法人営業は、相手が新規か既存かで日々の動き方が変わります。job tagでは、ルート営業を既に取引がある顧客を回って困りごとを聞き出し自社サービスでの解決を考える営業、新規開拓営業を新しい顧客を獲得する営業で、知らない相手に一から説明する必要があるため断られることが多い営業と説明しています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「営業の仕事」、2026年9月26日閲覧)。

新規開拓営業とルート営業の比較表

項目

新規開拓営業

ルート営業

相手

まだ取引がない企業

すでに取引がある既存顧客

最初の仕事

接点づくり(問い合わせ対応・紹介・電話やメール)

定期訪問と困りごとの聞き取り

1件にかかる期間

長くなりやすい。断られることが多い

比較的短い。継続と追加提案が中心

成果物の中心

提案書

活動報告・追加提案の資料

新卒での担当

会社により、どちらから始まるかが異なる

既存の小口顧客から任される例もある

実際には、片方だけを担当するとは限りません。筆者が2015〜17年ごろにデジタル専業の広告会社でWeb広告の営業を担当していたときは、既存顧客の対応を続けながら、新規のコンペ(複数の会社が提案を競う場)が月1回ほどある、という配分でした。既存の運用改善と新規提案が同じ週に並ぶ、という進み方です。会社や時期によって比率は変わるため、説明会では担当の内訳を確認するとよいでしょう。

訪問が2件ある日の流れ(架空例)

架空例として、訪問が2件ある日の流れを示します。

  • 9:00 出社。メールを確認し、前日の商談で出た仕様変更を技術担当に依頼する
  • 10:00 訪問①。提案書を説明し、他部署の懸念と既存システムとの連携について質問を受ける
  • 12:00 移動と昼食。移動中に議事録の要点をメモする
  • 13:30 訪問②。既存顧客のフォロー。運用状況を確認し、追加の要望を聞き取る
  • 15:30 帰社またはオンラインで社内打ち合わせ。技術と要件をすり合わせ、見積の方針を決める
  • 17:00 議事録と活動報告を書き、翌日のアポイントと資料を確認する

働き方は商材によって変わります。job tagの「コンサルティング営業(IT)」には、テレワーク可の企業が多く、顧客への営業も訪問とオンラインミーティングを使い分けていると記載があります。一方で「OA機器営業」には、外回りが多く車の運転も必要で、土日休みが多いものの顧客の都合で休日出勤することもあると書かれています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「OA機器営業」、2026年9月26日閲覧)。同じ法人営業でも、在宅勤務の日数や外回りの比率は会社と商材で異なります。

新卒が最初に任される仕事と、負荷が起きる場面

新卒1年目の法人営業が任されやすい同席・議事録・見積下書きなどの仕事を並べた図

新卒が入社していきなり大型案件を単独で任されることは、多くはありません。先輩の案件の補助から始まり、小規模な既存顧客の担当を経て、新規開拓に進む順序をとる会社が多いようです(会社により異なります)。

最初の1年で任されやすい仕事(架空例を含む)

job tagの「OA機器営業」には、入社後に営業として必要な教育・研修を経て配属されることが多く、配属後はベテラン営業員のアシストをしながら知識を習得し、その後単独で営業活動を行うと記載されています。「コンサルティング営業(IT)」には、入社後に営業部署に配属されて技術知識を学ぶ場合と、SEを経験してから営業に配属される場合があると書かれています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「コンサルティング営業(IT)」、2026年9月26日閲覧)。

筆者の場合も、入社後にまず行ったのは先輩の商談・訪問への同席でした。自分で話すより、先輩が何を聞き、どこで持ち帰るかを見る時間です。実際の日々の仕事は資料作成と顧客訪問が大半を占めていました。2015〜17年ごろの一例であり、現在の標準ではありませんが、「最初は同席と資料作成から」という入り方は、法人営業では珍しくありません。

最初の1年で任されやすい仕事を並べると、次のとおりです。

  • 先輩の商談への同席と、議事録の作成・共有
  • 見積書の下書きと、社内の承認手続き
  • 既存顧客への定期連絡と、利用状況の確認
  • 展示会での受付・名刺整理、問い合わせへの一次対応
  • 技術や運用担当との日程調整、打ち合わせの設定

地味に見える業務ですが、議事録と見積の下書きは、案件の全体像を把握するための最短ルートです。誰が何を気にし、どこで金額が動くかが、書くたびに見えてきます。

負荷が起きる3つの場面と、その理由

法人営業で業務が重くなる場面は、おおむね理由が特定できます。

  • 顧客の決裁待ちと、自社の締めがずれる場面。job tagは、企業相手は社内協議が必要で即決できないことが多いと記載しています。顧客側の稟議は自社の月末や四半期末とは無関係に進むため、待ちと締めが重なると調整が増えます。上司が同席して決裁者に直接説明する、次期の予算で進める前提に切り替えるなど、案件ごとに判断します。
  • 新規開拓で断られる回数が多い場面。job tagは、新規開拓営業は知らない相手に一から説明する必要があるため断られることが多いと説明しています。断られる件数そのものが業務の前提になるため、問い合わせ対応や紹介案件から始める配属にしている会社もあります。
  • 複数案件の日程が重なる場面。job tagの「コンサルティング営業(IT)」には、担当プロジェクトによって業務が立て込む場合があると記載されています。既存顧客の対応とコンペの準備が同じ週に並ぶと、資料作成の時間が圧縮されます。営業事務が見積や書類を分担する、技術担当が提案書の技術パートを受け持つといった分業で対応します。

なお、job tagで「コンサルティング営業(IT)」に対応する職業分類(通信・情報システム営業員等)の就業者数は581,280人(令和2年国勢調査を加工)、有効求人倍率は3.82(令和7年度)と示されています。「OA機器営業」に対応する分類(機械器具営業員等)の有効求人倍率は14.45(令和7年度)です(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「コンサルティング営業(IT)」・同「OA機器営業」、いずれも2026年9月26日閲覧)。これらは職業分類全体の数値で、当該職業のみの数値ではない点に注意してください。

業界で何が変わるか|商材・決裁者・営業方法の違い

「銀行の法人営業」「不動産の法人営業」のように業界名をつけて調べる人は多いですが、変わるのは主に3点です。

1つ目は商材です。job tagの「営業の仕事」では、商材は自動車・電化製品などの有形のほか、企業保険・広告・求人情報・IT関連・金融関連など無形も多いと説明されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「営業の仕事」、2026年9月26日閲覧)。無形商材ほど、提案書で価値を示す比重が高くなりやすいといえます。2つ目は話す相手です。総務・情報システム・購買・経営企画など、商材によって窓口の部署が変わり、大きな商材ほど経営者層が決裁者になります。3つ目は営業方法で、新規開拓中心か、ルート中心か、問い合わせに応じる反響営業かが業界や会社で異なります。

志望業界を絞ったら、job tagにある営業職の職業ページ(コンサルティング営業(IT)、OA機器営業、商社営業、広告営業など)で「タスク」と「就業するには」を読むと、その職種で実際に何をしているかが分かります。そのうえで、説明会では次の3つを聞くと、仕事内容の解像度が上がります。新卒は最初にどの顧客・どの商材を担当するか。提案書は営業が書くのか、技術や制作と分担するのか。受注後はどの部署に引き継ぎ、営業はどこまで関わるのか。

まとめ

法人営業の仕事は、会社の予算を使うという判断に、担当者と一緒に数週間から数か月付き合うことだと整理できます。営業が一人で売るのではなく、顧客の課題を聞いて社内の技術・制作・運用へつなぎ、提案書と見積という形にして決裁のテーブルに載せる。受注後は引き継ぎとフォローを行い、そこで見えた課題が次の提案の入口になります。

次にやることは2つです。志望業界に近い営業職のページをjob tagで開き、「タスク」の項目を上から読んでみてください。自分が毎日やる作業をイメージしやすくなります。そのうえで説明会や面談では、新卒が最初に担当する顧客と商材、提案書の分担、受注後の引き継ぎ先を確認しましょう。求人票の職種名だけでは分からない差が、そこに表れます。