ビジネスでの言葉遣いに迷ったら、「誰の行動を話しているか」と「相手に何を伝えたいか」を先に整理しましょう。そのうえで、です・ます調や場面に合う敬語を選びます。

難しい言い回しを多く使うことだけが、丁寧な対応ではありません。相手が聞き取れる速さで、用件を具体的に伝えることも大切です。

この記事では、企業との連絡やインターン先で使う言葉遣いを、基本から整理します。例文は使い方を説明するために作成したもので、実在する社員や学生の体験談ではありません。

ビジネスの言葉遣いは、相手・用件・場面から決める

相手・用件・場面の3点から言葉遣いを決める流れを示した図

同じ内容でも、友人と話すときと、初めて会う社員に話すときでは伝え方が変わります。相手との関係を考えながら、要点が伝わる言葉を選びましょう。

最初に意識したいのは、次の三つです。

  • 相手:初対面か、普段から話している人か。
  • 用件:報告、質問、依頼、謝罪のどれか。
  • 場面:会議、電話、メール、短いチャットのどれか。

たとえば、資料を受け取った返答なら「資料を受領しました。ありがとうございます」と伝えられます。内容を確認していないのに「確認しました」と言うと、事実が変わってしまいます。丁寧さに加えて、どこまで終わっているかを正確に伝えてください。

文化庁は、敬語の基盤として相互尊重を挙げています。年齢や立場だけで機械的に言い方を変えるのではなく、その場の関係や状況を踏まえて相手に配慮する考え方です。

参照:文化庁「第一話 敬語の心得」解説(2026年9月14日閲覧)

よくある質問

Q敬語は三種類ですか、五種類ですか?
A

尊敬語・謙譲語・丁寧語の三つで学ぶこともあります。文化庁の解説は、謙譲語をⅠとⅡに分け、美化語も区別する五分類です。呼び名だけでなく、各表現が何を丁寧にしているかを確認しましょう。

Q先輩に「敬語でなくてよい」と言われたら、すぐに崩してよいですか?
A

相手との関係や職場の雰囲気を見て調整します。まずは、です・ます調を保ちながら自然に話す方法もあります。社外の人が同席する場面では、その人にとって分かりやすい言い方も意識してください。

Q丁寧な言葉を使っていれば、依頼は失礼になりませんか?
A

言葉だけでは判断できません。依頼する量、期限、相手の状況なども関係します。対応できるかを確かめ、必要なら条件を相談しましょう。

Q敬語を一度間違えたら、選考に落ちますか?
A

一度の言い間違いだけで合否が決まるとは断定できません。気付いた箇所を落ち着いて直し、質問や用件に向き合いましょう。

敬語の基本は「誰の行動か」で整理する

尊敬語・謙譲語・丁寧語・美化語など敬語5種類と例語を整理した表

まずは、相手の行動と自分の行動を分けて考えます。「言う」という動詞でも、相手について話すのか、自分について話すのかで選ぶ形が変わります。

敬語の種類を大まかにつかむ

文化庁の解説では、敬語を尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の五つに分けています。次の表は、学び始めるときの整理です。

種類

整理の仕方

言葉の例

尊敬語

相手などの行動を、その人を立てて述べる

おっしゃる、いらっしゃる

謙譲語Ⅰ

自分側から相手などへ向かう行動を、その相手を立てて述べる

伺う、申し上げる

謙譲語Ⅱ(丁重語)

自分側の行動を、話している相手へ丁重に述べる

申す、参る

丁寧語

文全体を丁寧に述べる

です、ます

美化語

物事を美しく整えて述べる

お料理、お酒

参照:文化庁「第二話 敬語の基本」解説(2026年9月14日閲覧)

名称だけを覚えても、会話ではすぐに出てこないかもしれません。まずは「自分が説明する」「相手が説明する」のように主語を入れて、短い文で練習しましょう。

自分の行動に尊敬語を使わない

たとえば自分の発言を伝えるなら、「先ほど私が申し上げた点です」と表現できます。「先ほど私がおっしゃった点です」では、自分の行動に相手を立てる言葉を使ってしまいます。

反対に、担当者が会場に来るかを聞くときは、「担当の方はいらっしゃいますか」と尋ねられます。形を暗記するだけでなく、その言葉で誰を立てているのかを確かめましょう。

よく使う言葉を、短い文で覚える

最初からすべての表現を覚える必要はありません。自己紹介、確認、依頼など、あなたが使う場面から練習すると実際の会話につなげやすくなります。

伝えたいこと

表現の例

確認する点

名乗る

○○大学の山田と申します。

氏名と所属を聞き取れる速さで話す

依頼を受ける

承知しました。明日までに提出します。

期限まで引き受けられるか確認する

相手の都合を聞く

ご都合はいかがでしょうか。

何の都合かを前後で示す

説明を聞き直す

もう一度ご説明いただけますか。

聞き直したい箇所を具体的にする

資料を確認したと伝える

お送りいただいた資料を拝見しました。

実際に確認済みかを確かめる

訪問の予定を伝える

ご指定の時刻に伺います。

日付・場所の認識を合わせる

謝る

添付を失念しておりました。申し訳ありません。

何について謝っているかを示す

感謝する

ご対応いただき、ありがとうございます。

必要なら何への感謝かを添える

表の例は唯一の正解ではありません。相手との関係や会話の流れに合わせ、自然に伝えられる表現を選んでください。

「了解しました」は一律に誤りと決めつけない

「了解しました」を誤用や失礼な言葉と一律に断定するのは適切ではありません。ただし、改まったやり取りでは「承知しました」や「かしこまりました」を使う方が、その場に合わせやすいことがあります。

重要なのは、返事と実際の対応が一致していることです。依頼内容が分からないまま「承知しました」と返すより、疑問点を確認してから引き受けましょう。

相づちは、同意と理解を区別する

話を聞いていることを示す「はい」と、依頼を引き受ける返事は同じではありません。作業を頼まれたときは、「はい、内容を確認しました。期限について一点ご相談があります」のように、理解したことと相談したいことを分けられます。

相づちだけで会話を終えると、相手は引き受けてもらえたと考えるかもしれません。迷っている点を短く添えましょう。

会話・電話・メールでの使い方

対面・電話・メールそれぞれで意識する言葉遣いの要点を並べた図

同じ敬語でも、媒体に合う長さへ整えると伝わりやすくなります。電話では聞き返しやすく、メールでは後から確認しやすい形にしましょう。

対面では、質問の焦点を一つにする

「本日の説明について、一点お伺いしてもよろしいでしょうか。配属後は、どのような順序で仕事を覚えていくのでしょうか。」

説明会などで質問する例です。前置きを長く続けるより、何について知りたいかを早めに伝えます。

聞きたいことが複数ある場合も、一度に並べすぎないようにしましょう。一つ目への返答を聞いてから補足を尋ねれば、相手の説明を踏まえて会話を進められます。

面接での入退室や姿勢などは、新卒の面接マナーの解説で確認できます。

電話では、名乗りと用件を分けて話す

「○○大学の山田と申します。説明会の参加について確認したく、お電話しました。採用ご担当の方はいらっしゃいますか。」

取り次いでもらう場面では、まず誰から何の電話かを伝えます。担当者へつながったら、改めて名乗って用件を説明しましょう。

音声が聞き取りにくいときは、「恐れ入ります。最後の部署名をもう一度伺えますか」と、聞き取れなかった部分を特定します。推測で話を進めるより、確認する方が行き違いを減らせます。

メールでは、丁寧さと要点の見つけやすさを両立する

提出書類を確認する例

「応募書類について、一点確認させてください。成績証明書は、応募時点の最新版を提出する認識でよろしいでしょうか。」

メールでは、読み手がどこに返答すればよいかを意識します。長い挨拶の中に質問を埋め込まず、用件と確認事項を分けましょう。

「ご確認のほどよろしくお願いいたします」だけでは、返答が必要か、目を通せばよいのかが分からない場合もあります。「誤りがあればご指摘いただけますか」など、必要な対応を具体的に書きます。

丁寧にしようとして起こりやすい言い方

敬語を重ねた言い方と短く整えた言い方を左右で比べた図

敬語を重ねる前に、短い形で意味が通じるかを確認しましょう。表現の長さと、相手への配慮の大きさは同じではありません。

「させていただく」を何にでも付けない

「資料を送付させていただきます」は、文脈によって「資料を送付いたします」で用件を伝えられます。「させていただく」を付ければ、どの文でも丁寧になるわけではありません。

文化庁は「させていただく」の基本的な条件として、相手側などの許可と、自分側が恩恵を受ける事実や気持ちを示しています。状況に合っているかを考え、単なる報告なら短い表現も検討しましょう。

参照:文化庁「第三話 敬語のTPO~依頼の仕方~」解説(2026年9月14日閲覧)

二重敬語は、よく使う形から見直す

「おっしゃられる」は「おっしゃる」に、「ご覧になられる」は「ご覧になる」に整理できます。「先生がおっしゃった内容」「資料をご覧になりましたか」のように、短い文で使ってみましょう。

ただし、敬語らしい形が重なって見える表現を、すべて機械的に誤りと決めつけるのも避けてください。気になる表現は、信頼できる辞書や文化庁の解説で使い方を確認します。

日常会話の曖昧な表現を、そのまま使わない

「たぶん大丈夫です」「それでいいです」では、何を判断した返事なのかが曖昧です。「ご提示の日程で参加できます」「その内容でお願いいたします」のように、返答の対象を示しましょう。

逆に、まだ確認できていないことは、丁寧に言い切らないようにします。「確認のうえ、本日中にご連絡します」と伝えれば、現在の状態と次の対応が分かります。約束する時刻は、対応できる見込みがある場合に限って示してください。

言葉遣いを身に付けるための練習

自分が使う予定の文を声に出し、相手が返答できる形になっているかを見直しましょう。暗記した表現を増やすだけでなく、実際の用件に当てはめることが大切です。

明日の場面を一つ選んで、短い文を作る

たとえば明日インターン先で質問するなら、質問内容を一つ書き出します。そこに「恐れ入りますが」といった前置きが必要かを考え、最後を質問として整えます。

声に出したときに途中で息が切れるほど長ければ、二つの文に分けてみましょう。語尾だけでなく、主語や確認したい対象が抜けていないかも確認します。

間違えたら、必要な箇所を言い直す

会話中に言い間違いへ気付いた場合は、「失礼しました」と短く添えて訂正できます。言葉の形を気にして何度も説明を中断するより、伝えたい内容を落ち着いて続けましょう。

日時、数量、相手の名前など、内容に影響する間違いは明確に訂正します。敬語の形の間違いと、用件そのものの間違いを分けて対応してください。

相手が理解して動ける言葉を選ぼう

ビジネスの言葉遣いは、敬語の正しさに加え、用件を正確に伝えることが大切です。相手の行動と自分の行動を分け、場面に合う短い表現から使ってみましょう。

次に企業へ連絡するときは、「誰に」「何を」「どうしてほしいか」を先に整理してください。その内容に合わせて敬語を選ぶと、形だけの丁寧さに頼らないやり取りにつながります。