広告代理店の仕事内容を一言でいうと|広告主の課題を「広告」で解決し、媒体と制作をまとめる仕事

広告代理店の仕事内容を簡単に言うと、自社で商品を持たず、他社(広告主)の課題を広告で解決して対価を得る仕事です。クライアントである企業の「売りたい」「知らせたい」という課題を受け取り、広告という手段に翻訳していきます。

日々の業務は、大きく4つの動きの繰り返しです。①広告主の課題や予算、期間、届けたい相手を聞く。②誰に・何を・どの媒体で伝えるかを企画し、提案する。③媒体社から広告枠を買い、制作会社と広告物を作る。④実際に広告を出し、効果を測って次の提案につなげる。この循環が、広告代理店の仕事内容の骨格です。

呼び方についても先に整理しておきます。「広告代理店」と「広告会社」は、同じ業態を指す呼称の違いです。業界団体である一般社団法人日本広告業協会(JAAA)は、自らの構成員を「日本を代表する広告会社約140社がメンバー」と表記しています(日本広告業協会「協会概要」、2026年9月26日閲覧)。この記事では、検索で多く使われる「広告代理店」と、業界で使われる「広告会社」の両方を状況に応じて使います。

そして、就活生が持ちやすい「広告代理店=CMを作る会社」というイメージについてです。CMの制作は確かに仕事の一部ですが、全体から見ると一部分にすぎません。実際の比重が大きいのは、課題を整理すること、企画を提案書にまとめること、媒体社や制作会社と条件や日程を調整すること、出た結果を分析して次につなげることです。手を動かして表現そのものを作るのは、多くの場合クリエイティブ職と制作会社であり、広告会社全体では企画・調整・分析の時間が長くなります。

職種を並べただけの説明では、この全体像はつかみにくいはずです。そこでこの記事は、「1つの案件がどう進むか」という流れと、「その中で誰が何を担うか」という分担を軸に説明します。まずは業界全体の地図から見ていきます。

よくある質問

Q広告代理店と広告会社は何が違いますか?
A

同じ業態を指す呼び方の違いで、事業内容に差はありません。業界団体である日本広告業協会は「広告会社」と表記しており、業界内ではこの呼称が使われます。一方、検索や日常会話では「広告代理店」が一般的です。この記事では両方を状況に応じて使っています。

Q広告代理店と制作会社の違いは?
A

広告会社は広告主の課題を受け、企画・媒体の手配・制作の発注を束ねる立場です。制作会社は、CMや動画、バナーなどの広告物を実際に作ります。ただし制作会社が企画段階から関わる案件や、広告主と直接取引する会社もあり、境目は会社ごとに異なります。

Q広告代理店の仕事を簡単に言うとどうなりますか?
A

広告主の課題を聞く→誰に何をどの媒体で伝えるか提案する→媒体社・制作会社と広告を作って出す→効果を測って次につなげる、という繰り返しです。CMを作ることだけが仕事ではなく、企画・調整・分析にかかる時間のほうが長くなります。

Qコンペとは何ですか。どんな流れで進みますか?
A

同じ課題に対して複数の広告会社が提案し、広告主が依頼先を選ぶ仕組みです。おおまかには、広告主からの与件提示→各社での提案準備→プレゼンテーション→選定という流れで進みます。準備の実務は資料作成の積み重ねで、詳細はコンペを扱う記事で整理します。

Q広告代理店の大手はどこですか?
A

この記事では順位づけはしません。日本広告業協会の会員社一覧には約140社が参加しており、そこから気になる会社を拾って、扱う媒体・領域、案件のどの段階を自社で担うか、新卒の入口はどこかの3点で比べる方法をおすすめします。

Q広告代理店に営業以外の文系職種はありますか?
A

ストラテジックプランナー、メディアプランナー、運用担当、プロモーション・PR、コピーライター、営業事務など、文系出身者が就く職種は複数あります。ただし職種の区分や名称、新卒での募集の有無は会社ごとに異なるため、各社の募集要項で確認してください。

広告業界の地図|広告主・広告会社・媒体社・制作会社・生活者と、依頼・お金・広告の流れ

広告主・広告会社・媒体社・制作会社・生活者の5者と依頼・お金・広告の流れを示した関係図

広告業界の地図は、5つのプレイヤーと3種類の流れで読めます。会社名を覚える前に、この配置を押さえておくと、どの企業の説明会に行っても話が整理して聞けます。

5つのプレイヤーの役割

登場するのは、広告主・広告会社・媒体社・制作会社・生活者の5者です。それぞれの役割を確認します。

  • 広告主:商品やサービスを売りたい企業です。社内の宣伝部やマーケティング部が窓口になります。広告主側の団体である公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(JAA)は「日本の有力なアドバタイザー企業・団体」で構成され、消費者・生活者に役立つ信頼性の高い情報の提供や、アドバタイザーの社会的責任・倫理意識の向上を目的に掲げています(日本アドバタイザーズ協会「協会概要」、2026年9月26日閲覧)。
  • 広告会社(広告代理店):広告主の課題を受け、企画・媒体・制作を束ねる立場です。業界団体はJAAAです。
  • 媒体社(メディア):テレビ局・新聞社・出版社・ラジオ局・Webメディア・プラットフォームなど、広告枠を持つ会社です。
  • 制作会社:CM・グラフィック・Webサイト・動画などを実際に作る会社です。広告会社から発注を受けることが多い立場です。
  • 生活者:広告を見る人であり、商品を買う人です。広告の最終的な届け先はここになります。

JAAAは、広告主・媒体社・協力機関と協働し、広告を通じて企業とメディアと生活者を結ぶことを目指すとしています(日本広告業協会「協会概要」、2026年9月26日閲覧)。広告会社が「間に立つ」業態だという性格が、団体の説明からも読み取れます。

依頼・お金・広告はどう流れるか

同じ5者の間を、3種類のものが違う向きに流れています。

依頼の流れは、広告主から広告会社へ、そして広告会社から媒体社・制作会社へと下りていきます。広告主が「新商品を若い層に知らせたい」と相談し、広告会社がそれを媒体の発注と制作の発注に分解します。

お金の流れは、依頼と同じ向きです。広告主が広告会社に支払い、広告会社が媒体社に媒体費を、制作会社に制作費を支払います。広告会社が受け取る対価は、大きく分けると媒体の取り扱いに伴うものと、企画・制作進行・運用などの業務に対するものに整理できます。手数料の具体的な率は会社や契約によって異なるため、この記事では扱いません。お金の仕組みの詳細は、広告代理店のビジネスモデルを扱う記事に譲ります。

広告の流れは、逆方向に進みます。制作会社が作った広告物を、広告会社が媒体社の枠に載せ、媒体を通じて生活者に届きます。そして生活者の反応(認知、来店、購入、クリックなど)がデータや調査として広告主・広告会社に戻り、次の企画の材料になります。依頼とお金は上流から下流へ、広告と反応は下流から上流へ。この往復が業界の基本構造です。

「広告業界 カオスマップ」という検索をしたことがある人もいるかもしれません。カオスマップは、多数の会社のロゴを領域別に並べた図です。一見すると情報量に圧倒されますが、それぞれの会社がこの5者のどこに位置するかを意識して見ると、読み解けるようになります。媒体枠を持つ会社なのか、広告主の課題を受ける会社なのか、制作を担う会社なのか。その区別が最初の補助線です。

なお、実際にはこの5者の間に立つ会社も存在します。媒体社と広告会社の間で枠の取り扱いを担うメディアレップや、多数のWebメディアの広告枠をまとめて扱うアドネットワーク事業者などです。インターネット広告の商流は特に層が厚くなりますが、ここではまず5者の骨格を押さえておけば十分です。

案件の流れで見る広告代理店の仕事|課題整理から効果測定まで6ステップ

課題のヒアリングから効果測定までの広告案件6ステップを示した縦型のタイムライン図

広告代理店の仕事内容は、1つの案件の流れに沿って見ると理解しやすくなります。ここでは架空の例として「飲料メーカーが新商品を20代に知らせたい」という案件を設定し、6ステップで追います。各ステップで、広告会社が何をして、相手は誰で、何を成果物として出すのかに注目してください。

①課題のヒアリング〜②企画・提案(コンペ)

①課題のヒアリングでは、広告主の宣伝部やマーケティング部から要望を聞き取ります。確認するのは、目的(認知を広げたいのか、店頭での購入を増やしたいのか)、予算、期間、届けたい対象、これまでの施策と結果などです。聞いた内容を整理した「ブリーフ(与件整理)」が、この段階の成果物になります。広告主の言葉をそのまま受け取るのではなく、本当の課題がどこにあるかを一緒に確かめる作業でもあります。

②戦略・企画・提案では、誰に・何を・どう伝えるかを決めます。市場や生活者の調査をもとに方針を立て、媒体の組み合わせと概算費用を提案書にまとめます。この提案の場として代表的なのが「コンペ」です。複数の広告会社が同じ課題に対して提案し、広告主がその中から依頼先を選びます。大まかな流れは、広告主からの与件提示 → 各社での提案準備 → プレゼンテーション → 選定という順序です。コンペの準備の進め方は、別途コンペを扱う記事で詳しく整理します。

新規の案件が生まれる経路は、コンペだけではありません。筆者が2015〜17年ごろに在籍していたデジタル専業の広告会社での経験では、取引のある会社から声をかけられて提案に加わるケースもありました。たとえば電鉄系のハウスエージェンシーと組み、その先の広告主に一緒に提案するといった形です。広告会社同士が競い合うだけでなく、役割を分けて組む場面もあると知っておくと、業界の見え方が少し変わります。

③媒体計画・枠の確保〜④制作

③媒体計画と枠の確保では、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・インターネット・SNS・屋外・交通など、どの媒体にどれだけ配分するかを決めます。対象が20代であれば、テレビとインターネット動画、SNSの組み合わせをどう設計するかといった検討になります。配分が決まったら媒体社と条件を交渉し、枠を確保します。相手は媒体社、成果物は媒体プランと発注書です。限られた予算の中で到達をどう最大化するか、数字を使った設計が求められる場面です。

④制作では、表現の方向性を決め、制作会社とともに実際の広告物を作ります。CMであれば絵コンテから撮影、編集へと進み、インターネット広告であればバナーや動画、ランディングページを制作します。相手は制作会社と、広告主側の確認担当です。成果物は、媒体に入稿できる状態の広告物です。この段階では、表現の質を高める作業と同時に、スケジュールと予算を守る進行管理が重要になります。広告表現に関わる法令や業界ルールの確認も、この段階で行います。

⑤出稿・運用〜⑥効果測定・報告

⑤出稿・運用では、決めた日程で広告を出します。テレビや新聞のように出稿日が決まっている媒体は、入稿の締め切り管理が中心です。一方、インターネット広告は出稿してからが長く、配信設定や入札、クリエイティブの差し替えを日々調整する「運用」が続きます。相手は媒体社やプラットフォームです。

⑥効果測定・報告・改善では、結果をまとめて広告主に報告します。認知率、来店数、売上、クリック数、申込数など、①で設定した目的に対応する指標で振り返ります。成果物はレポートです。そして、うまくいった点と課題を整理し、次の提案につなげます。ここで①に戻り、案件は循環します。

この6ステップは、どの案件でも同じ太さで進むわけではありません。テレビを中心とした案件では③の媒体計画と④の制作に時間と人が集中し、インターネット広告中心の案件では⑤の運用と⑥の効果測定が長く続きます。扱う媒体によって、仕事内容の重心が変わるということです。この点は、会社選びを考えるときの重要な視点になります。

広告業界の職種一覧|誰が何を作り、誰に渡すかを表で見る

広告業界の主な職種が案件のどのステップを担当し何を成果物とするかを整理した表

広告業界の職種は、単独で存在するのではなく、先ほどの6ステップのどこを担うかで整理できます。職種名を暗記するより、「案件のどの段階で、誰に対して、何を作って渡すか」で覚えるほうが、面接での説明もしやすくなります。

職種×案件のステップ×成果物の対応表

職種

主に担当するステップ

主な相手

主な成果物

営業/アカウント

①②⑥(全体の進行も束ねる)

広告主、社内各職種

提案書、見積、報告書

ストラテジックプランナー

②

営業、クリエイティブ、調査会社

戦略、コンセプト、ターゲット設計

メディアプランナー/メディアバイイング

③⑤

媒体社、営業

媒体プラン、発注・買付

クリエイティブ(CD・コピーライター・アートディレクター)

②④

広告主、制作会社、営業

企画、コピー、デザイン、絵コンテ

運用担当

⑤⑥

プラットフォーム、営業

配信設定、入札調整、運用レポート

プロモーション/PR

②④⑤

会場・店頭の関係先、報道機関

企画書、イベント・店頭施策、パブリシティ

データ・テクノロジー

②⑥

営業、広告主のデータ担当

計測設計、分析レポート、ダッシュボード

制作会社側の職種(プロデューサー・プロダクションマネージャー・デザイナー)

④

広告会社、演者・スタッフ

CM・動画・グラフィック・Web制作物

表を見ると分かるとおり、営業だけが全ステップに顔を出し、他の職種は特定の段階に強く関わります。裏を返せば、営業は自分で作るというより、各職種の成果物を広告主につなぐ役割だということです。代理店の中は役割ごとに細かく分かれているため、営業の主な仕事は顧客との折衝になります。提案書の骨子は営業が作っても、戦略の裏づけはプランナー、表現はクリエイティブ、配信の設計は運用担当が担う、といった具合に分業が進んでいます。

「広告代理店 仕事内容 事務」で調べている人向けにも触れておきます。案件を支えるバックオフィス職として、営業事務、媒体の手配・入稿管理、請求・支払の処理、契約書のチェックといった業務があります。出稿は日程と金額が厳密に動くため、発注書や請求の処理が滞ると案件そのものが止まります。表に並べた職種と同じく、案件の流れの一部を担う仕事です。募集の有無や職種名は会社ごとに異なるため、募集要項で確認してください。

なお、各職種の具体的な業務内容や選考での見られ方は、職種ごとの記事で個別に扱います。ここでは「流れの中の位置」をつかむことを優先してください。

呼称は会社ごとに違う。役割で覚える

職種名は会社によって異なります。就活の段階では「営業」と「アカウントプランナー」の違いが分からず、求人を見比べても判断がつかないことは珍しくありません。実際、同じ役割を「営業」と呼ぶ会社もあれば、「ビジネスプロデューサー」「アカウントエグゼクティブ」「アカウントプランナー」と呼ぶ会社もあります。逆に、名前が同じでも担う範囲が違うこともあります。

たとえば電通の採用情報ページには、新卒向けプログラムとして「さわれるビジネスプロデュース塾」「メディア・コンテンツ塾」「アイデアの学校」「電通デザインサマースクール」「電通データサイエンスインターンシップ2026」などが並んでいます(電通「採用情報」、2026年9月26日閲覧)。ビジネスプロデュース、メディア・コンテンツ、アイデア、データサイエンスという職能の括りが、採用の入口の段階で示されている一例です。ただしプログラム名は職種名や配属先そのものではないため、実際の職種区分は各社の募集要項で確認する必要があります。

迷ったときは、名前ではなく「6ステップのどこを担当し、何を成果物として出すのか」に置き換えて考えてください。説明会で職種名の意味が分からなければ、「その職種は提案から出稿までのどの段階に関わりますか」と聞けば、具体的な答えが返ってきます。

Web広告の営業は実際に何をしていたか|2015〜17年ごろ、ある営業担当の場合

広告営業が自分で担う工程と社内外の専門担当に渡す工程を左右で比較した図

ここでは、広告代理店の営業という仕事内容を、一つの具体例から見ていきます。2015〜17年ごろ、デジタルマーケティング専業の広告会社でWeb広告の営業・コンサルタントを約2年担当した際の話です。当時の一社・一担当の経験であり、業界全体の標準ではありません。会社や時期が変われば進め方も変わる点は、前提として押さえてください。

顧客の相談から提案書まで

日々の時間配分で言えば、資料作成と顧客訪問が大半でした。既存のクライアントを定期的に訪問して状況を確認し、次の施策を相談する。並行して、新規のコンペが月に1回ほどありました。

「コンペ」という言葉は、就活生には華やかに聞こえるかもしれません。実際の中身は、資料作成の積み重ねです。与件を読み込み、対象と目的を整理し、媒体の配分を組み、費用感を出し、提案の流れを1枚ずつスライドに落としていく。その作業を締め切りまで繰り返します。プレゼンの場で話す時間は短く、その前段にある準備の時間が圧倒的に長いというのが実感でした。

入社直後は、いきなり自分の担当を持つわけではありませんでした。まず先輩の商談に同席することから始まりました。クライアントがどんな聞き方をするか、先輩がどう答えるか、何を持ち帰って宿題にするか。そのやりとりを横で見ることが、最初の仕事でした。

運用・制作チームへ依頼し、結果を報告する

提案が通ったあと、営業がすべてを一人で進めるわけではありません。配信の設定や日々の入札調整は運用のチームが担い、バナーや動画などの広告物は制作のチームや外部の制作会社に依頼します。営業は、クライアントから聞いた目的と制約を社内に正しく伝え、出てきたものを確認して、クライアントに戻す立場です。

この境目は、先ほどの6ステップに重ねると分かりやすくなります。営業が直接手を動かすのは①のヒアリングと②の提案書、そして⑥の報告です。③の媒体まわりや⑤の運用、④の制作は、社内外の専門の担当に渡します。つまり営業の仕事内容は、「全ステップに関わるが、全ステップを自分で作るわけではない」という形です。

結果の報告も営業の役割でした。配信の数字をレポートにまとめ、当初の目的に対してどうだったかを説明し、次にどうするかを相談する。ここが次の提案の入口になります。案件は一度出して終わりではなく、報告と改善の往復が続いていく、という感覚が近いです。

会社の種類で仕事はどう変わるか|総合広告会社・デジタル専業・ハウスエージェンシー・制作会社

総合広告会社・デジタル専業・ハウスエージェンシー・制作会社の扱う領域と担当範囲を比較した図

同じ「広告代理店」でも、会社の種類によって扱う媒体も、案件の中で担う範囲も変わります。就活で会社を比べるときは、この違いを先に押さえておくと判断しやすくなります。

4種類の会社の比較表

会社の種類

扱う媒体・領域

主な顧客

案件の中で担う範囲

職種の例

総合広告会社

テレビ・新聞・雑誌・ラジオからデジタル、イベント、店頭まで幅広い

業種を問わず幅広い広告主

①〜⑥を一貫して担うことが多い

営業、ストラテジックプランナー、メディアプランナー、クリエイティブ、PR、データ

デジタル専業・インターネット広告会社

インターネット広告、SNS、運用型広告、データ活用

デジタル施策を中心に据える広告主

②③⑤⑥、特に⑤⑥が長く続く

営業(コンサルタント)、運用、データ、クリエイティブ

ハウスエージェンシー

グループの事業に関わる媒体・領域が中心

特定企業グループとその関係先

①〜⑥。グループ事業の理解が前提になる

営業、プランナー、制作進行

制作会社

CM・動画・グラフィック・Webなど制作物

広告会社、直接の広告主もある

④が中心。企画(②)から入る会社もある

プロデューサー、プロダクションマネージャー、デザイナー、ディレクター

総合広告会社は、マス媒体からデジタル、イベントまでを一貫して扱う会社です。JAAAの会員社一覧には、電通、博報堂、ADKホールディングス、大広、読売広告社、東急エージェンシー、朝日広告社、I&S BBDO、日本廣告社などが50音順で掲載されています(日本広告業協会「会員社一覧」、2026年9月26日閲覧)。よく名前が挙がる2社以外にも、多くの会社がこの業界にあることが分かります。

デジタル専業・インターネット広告会社は、運用型広告やデータ活用を軸にする会社です。同じ会員社一覧にはサイバーエージェントも掲載されています。ただし近年は、総合広告会社がデジタル領域を強化し、デジタル専業の会社がマス媒体やブランディングまで手がけるようになっており、総合と専業の境目ははっきりしなくなっています。分類は目安として使い、最終的には各社の事業紹介で確認してください。

ハウスエージェンシーは、特定の企業グループの広告を主に担う広告会社です。グループの事業や商品への理解が深い一方、顧客の幅は限定されます。詳細はハウスエージェンシーを扱う記事で整理します。

制作会社は、④の制作を担う立場です。広告会社から発注を受けるのが基本ですが、企画段階から関わる会社や、広告主と直接取引する会社もあります。

「電通と博報堂だけ」ではない。会員一覧から地図に置いてみる

広告会社の機能は、媒体の売買にとどまりません。たとえばADKマーケティング・ソリューションズは事業紹介として、「顧客データ&インサイト」「顧客接点マネジメント」「顧客体験デザイン」という3つのソリューション領域と、部門の垣根を越えた統合ソリューションを掲げています(ADKマーケティング・ソリューションズ「事業紹介」、2026年9月26日閲覧)。データの分析から顧客との接点設計、体験づくりまでを事業として示している例です。広告枠を売る会社という理解だけでは、現在の広告会社の仕事内容は捉えきれません。

もう一点、会社選びで重要な視点があります。広告代理店は、会社によって扱う商材がまったく違います。Web・デジタルマーケティングの専業もあれば、テレビCMやオフライン広告が中心の会社、タクシー広告のような特定の媒体を扱う会社もあります。さらに広告の外側には、SEOを専門にする会社も多くあります。つまり「広告代理店」と一括りにせず、広い意味でのマーケティングの中で、自分がどこに興味があるのかをはっきりさせておくことが大事です。映像表現に関わりたいのか、データを使った改善が面白いのか、人が集まる場を作りたいのか。そこが定まると、見るべき会社の範囲がぐっと絞れます。

広告業界の数字を仕事に結びつける|インターネット広告費が総広告費の半分に

2025年の日本の総広告費とインターネット広告費など区分別の金額と前年比を示した図

市場の数字は、暗記するためではなく、仕事内容の重心を読むために使います。電通の推計によると、2025年の日本の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)でした。内訳を見ると、インターネット広告費が4兆459億円(前年比110.8%)、マスコミ四媒体広告費が2兆2,980億円(前年比98.4%)です(電通「2025年 日本の広告費」、2026年9月26日閲覧)。さらにプロモーションメディア広告費は1兆7,184億円(前年比102.0%)、マスコミ四媒体の内訳はテレビメディア1兆7,556億円(99.7%)、新聞3,136億円(91.8%)、雑誌1,135億円(96.3%)、ラジオ1,153億円(99.2%)となっています(電通「2025年 日本の広告費」解説ページ、2026年9月26日閲覧)。

区分(2025年)

広告費

前年比

総広告費

8兆623億円

105.1%

インターネット広告費

4兆459億円

110.8%

マスコミ四媒体広告費

2兆2,980億円

98.4%

プロモーションメディア広告費

1兆7,184億円

102.0%

この構成を、先ほどの6ステップに重ねてみてください。媒体の構成が変われば、案件の中で時間と人がかかる場所も変わります。テレビや新聞を中心とした案件は、③の媒体計画と④の制作に作業が集中し、出稿後は結果の確認が中心になります。一方、インターネット広告が大きな比重を占める案件では、出稿がゴールではなく、⑤の運用と⑥の効果測定が日々続きます。配信設定の調整、クリエイティブの差し替え、数値の確認といった作業が、案件期間を通して発生するためです。

この数字から「デジタル職の採用が増える」「マス媒体の仕事が減る」と単純に読むことはできません。メディアごとに役割も評価の仕方も異なり、組み合わせて使われるのが実際だからです。市場規模の推移や媒体別の詳しい動向は、広告業界の市場を扱う記事で改めて整理します。

新卒はどこから始まるか|採用の入口と最初の仕事の例

新卒採用の入口は、大きく2つに分かれます。ひとつは総合職として採用し、入社後に配属を決める方式。もうひとつは、職種別・コース別に採用する方式です。どちらを採るかは会社によって異なり、同じ会社でも年度によって変わることがあります。必ず各社の最新の募集要項で確認してください。

職能の括りが採用段階で示される例もあります。電通の採用情報ページには、ビジネスプロデュース、メディア・コンテンツ、アイデア、デザイン、データサイエンスといった名を冠した新卒向けプログラムが並んでいます(電通「採用情報」、2026年9月26日閲覧)。これは職種名や配属先そのものではありませんが、会社がどの職能を軸に人を迎えているかを知る手がかりにはなります。

最初の仕事は、いきなり案件を一人で任される形にはなりにくいのが一般的です。営業配属であれば、先輩の案件に同席し、議事録を取り、見積や発注書を作り、進行の確認をするところから始まります。運用配属であれば、配信設定の作業とレポート作成から入ることが多いでしょう。メディア関連の部署であれば、媒体資料の整理や入稿管理といった業務理解が先に来ます。いずれも、案件の流れを体で覚える段階です。何年目で何ができるようになるかは会社・部署・本人によって大きく違うため、年次や昇進の話として一般化はできません。

ここで役立つのが、「6ステップのどこから入り、どこまで広げるか」という見方です。新卒の最初の担当がどの段階かを知れば、入社後の数年で何が身につくかが想像しやすくなります。面接や説明会で「入社1〜2年目は、案件のどの段階の仕事から始まりますか」と聞いてみてください。抽象的な質問より、具体的な答えが返ってきます。

企業研究の進め方|地図のどこにいる会社かを3つの質問で確かめる

広告会社の企業研究で確認したい3つの質問を整理したチェックリスト図

企業研究は、会社名やランキングから入るのではなく、この記事の地図に当てて確かめるのが近道です。次の3つの質問で整理してみてください。

  • ①どの媒体・領域に強いか:総合的に扱うのか、インターネット広告中心なのか、特定の媒体や領域に専門性があるのか。
  • ②案件の6ステップのどこを自社で担い、どこを外部に出すか:制作を内製しているか、運用を社内で行うか、調査・分析の機能を持つか。
  • ③新卒はどの職種・どのステップから入るか:総合職一括か職種別か、最初の配属先はどの段階に関わるか。

調べ方は、各社の公式サイトの事業紹介、採用ページ、募集要項が基本です。あわせて、日本広告業協会「会員社一覧」(2026年9月26日閲覧)を入口に使うと、名前を知らなかった会社にも出会えます。JAAAには日本を代表する広告会社約140社がメンバーとして参加しています(日本広告業協会「協会概要」、2026年9月26日閲覧)。「大手はどこか」という疑問に順位で答えるのではなく、一覧から気になる会社を拾い、自分で地図に置いてみるほうが、面接で話せる材料になります。

説明会やOB・OG訪問では、次のような聞き方が具体的です。

  • 直近の案件では、提案から出稿までに社内のどの職種が関わりましたか。
  • 制作会社や媒体社とのやりとりは、どの職種が担当していますか。
  • インターネット広告の運用は社内で行っていますか、外部に委託していますか。

この3つを聞けば、その会社が6ステップのどこを自社の強みにしているかが見えてきます。そして前提として、自分が広いマーケティングの中でどこに関心があるのかを言葉にしておいてください。映像・表現なのか、媒体やデータの設計なのか、店頭や体験づくりなのか。それが決まっていれば、会社を比べる基準もぶれません。

まとめ

この記事の要点を整理します。

  • 広告代理店は、自社の商品ではなく広告主の課題を、広告という手段で解決する仕事です。
  • 業界の地図は、広告主・広告会社・媒体社・制作会社・生活者の5者で読めます。
  • 案件は、課題整理→企画・提案→媒体計画→制作→出稿・運用→効果測定の6ステップで循環します。
  • 職種は、その6ステップのどこを担い、何を成果物として渡すかで区別できます。
  • 会社の種類が変われば、扱う媒体も、案件の中で担う範囲も変わります。

次にやってみてほしいのは、気になる会社を3社選び、「強い媒体・領域」「6ステップのどこを担うか」「新卒の入口」の3点で表にしてみることです。公式サイトの事業紹介と募集要項だけでも、かなりの部分は埋まります。埋まらなかった欄が、そのまま説明会で聞くべき質問になります。